対価柔軟化においては、どのようなものが対価として認められますか?

一.旧法

  1. 旧法では、消滅会社の株主に交付する対価は、存続会社または新設会社の株式でなければならないとされています。
  2. ただし、割当の比率を簡単にするために対価の一部を金銭で交付する事は認められています。

二.新会社法

  1. 新会社法では、吸収合併、吸収分割または株式交換において、消滅会社の株主等に対して交付する対価については、「金銭その他の財産」であれば足りることとされており、それ以外には制限はもうけられていません。
  2. 吸収合併および株式交換においては、消滅会社の株主等に対して、その有する株式の数に応じて対価を交付しなければなりません。
  3. それゆえ、このような組織再編の対価を存続会社等の株式に限定せず、存続会社等の社債、新株予約権、新株予約件付社債、または株式等以外の財産とすることが認められると思われます。
  4. これは、従来からも産業再生法において定められていた特定金銭等の交付を恒久的に認めるものと思われますが、産業再生法において認められていたのは「金銭または他の会社の株式(譲渡制限会社の株式は除かれる)」とされていた事からすると、その対象となる範囲を更に広げたものといえます。
  5. すなわち、条文上は、金銭や他の株式会社の株式だけでなく、外国会社の株式や、信託受益権等、財産であれば幅広く認められる事となります。
  6. ただし、合併契約の内容として株主総会による承認の対象となりますから、もちろん株主が承服できる内容のものでなければなりませんが、客観的にも対価として適正なものでなければならないと解されます。
  7. 適正な対価といえるためには、流通性、換金性が認められる必要があると思われます。
  8. 新会社法では、組織再編の対価は金銭その他の財産であればよいものとされており、それ以外の制限がないので、実務ではそれ以外にも、組織再編の対価となる「その他の財産」として様々なものが用いられる事が予想されます。

略式組織再編行為とは何ですか?

略式組織再編行為

  1. 略式組織再編とは、支配関係のある会社間で、組織再編行為を行なう場合において、株式会社である被支配会社における株主総会の決議を要しないとするものです。
  2. 旧法のもとでは、組織再編行為については、簡易組織再編の場合を除き、株主総会の特別決議を要するものとされています。
  3. しかし、一方の会社が他方の会社をほぼ完全に支配しているような関係にある場合には、支配されている他方の会社における株主総会の開催を要せず、組織再編行為を行なう事ができればすこぶる便宜であるといえます。
  4. 実際にも、諸外国では略式合併(ショートフォーム・マージャー)として認められており、このような制度の創設は、経済界や米国等から要望が強く寄せられていました。
  5. 新会社法においては、ほぼ完全な支配関係にある会社間において組織再編行為をする場合には、株式会社である被支配会社において、仮に株主総会を開いたとしても、結論において変わる事がないことから、このような場合には、被支配会社の株主総会の開催を不要とすることにより、迅速かつ簡易な組織再編行為を行なう事を可能にしました。
  6. また、吸収合併、吸収分割および株式交換をする場合のほか、事業の全部または重要な一部の譲渡及び事業の全部の譲受等の場合においても、略式再編を認める事としています。
  7. なお、この支配関係は、ある株式会社(支配会社)が他の株式会社(被支配会社)の総議決権の9割以上を保有している状態をいい、新会社法は,この支配会社を「特別支配会社」というふうに呼んでいます。

略式組織再編行為において,少数株主や種類株主の利益はどのように保護されますか?

 少数株主および種類株主の保護
  1. 略式組織再編行為の差止請求被支配会社の株主は、当該略式行為が法令又は定款に違反し、又は著しく不当な条件で行なわれた事により、不利益を被る恐れがあるときは、当該略式再編行為の差し止めを請求することができます。
  2. 被支配会社が吸収合併における消滅会社又は株式交換における完全子会社である場合当該被支配会社が種類株式発行会社であり、かつ合併等対価の全部又は一部が譲渡制限株式等であるときは当該譲渡制限株式等の割当を受ける種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要します。当該被支配会社が種類株式発行会社であり、かつ合併等対価の全部又は一部が持分等である場合には当該持分等の割当を受ける種類の株主の全員の同意を要します。
  3. 被支配会社が吸収合併における存続会社、吸収分割における承継会社または株式交換における完全親会社である場合当該被支配会社が種類株式発行会社であり、かつ合併等対価等の全部又は一部が存続会社、承継会社又は完全親会社の譲渡制限株式である場合は、原則として、当該種類の株式の種類株主を構成員とする修理株主総会の決議を要します。
  4. 反対株主の株式買取請求組織再編行為について反対の株主については、公正な価格で自己の有する株式を買い取る事を請求できます。
  5. 無効の訴え合併契約書の内容が違法である場合など、組織再編行為が違法に行なわれた場合には、株主は、組織再編行為の無効の訴えを提起することができます。

外国会社は日本ではどのように扱われていますか?

一.会社の渉外関係

  1. 会社に関する私法的な法律関係が渉外的(国際的)な要素を含む場合、いろいろな問題を考える必要があります。
  2. 第一に、問題となる法律関係にどこの国の法律が適用されるかを決定しなければなりません。
    これは、国際私法のルールによって決定されます。
  3. 第二に、国際私法のルールによって準拠法が決まった場合には、その法律において、問題となる法律関係に具体的にどのような私法ルールが適用されるべきかを検討することになります。
二.日本の会社法における外国会社の取扱い
  1. 日本の民法は外国法人の認許の制度を設けています。
  2. 又、日本の会社法は、外国会社について、利害関係人を保護するために様々な規制を設けています。
三.外国会社の規制
  1. 日本で継続取引をする外国会社
    外国会社が日本で取引を継続して使用とするときは日本における代表者を決めなければなりません。
    この場合、その日本における代表者のうち一人以上は、日本に住所を有する者でなければなりません。
    会社について登記をしなければならず、登記をするまでは日本において取引を継続してすることはできず、これに違反して取引をしたものは、相手方に対し、外国会社と連帯してその取引によって生じた債務を弁済する責任を負います。
    ・外国会社の登記事項
     日本に成立する同種の会社または最も類似する会社の種類での登記事項によります。
    ・会社の設立準拠法
     代表者の氏名と住所・株式会社と同種又は類似の会社の場合は貸借対照表上等の公告方法・電磁的公開のウェヴサイトのアドレス等です。
     外国会社は日本に営業所を設ける必要はありませんが、仮に設けた場合は登記する必要があります。
  2. 貸借対照表等の公開
    日本の株式会社と同種又は類似の日本で継続取引をする外国会社は、貸借対照表またはこれに類似するものの公告または電磁的方法での公開が要求されます。
  3. 日本における全ての代表者の退任
    日本で継続取引をする外国会社の全ての代表者が退任するような場合は、会社債権者保護手続きをしなければならず、その手続きが終了してから退任の登記をすることで退任の効力が生じます。
  4. 取引継続の停止・営業所閉鎖命令および日本所在の外国会社財産の清算
    裁判所は、法務大臣または利害関係人の請求により、外国会社に対して日本での取引継続の停止・その営業所の封鎖を命じることができます。
    その要件は、日本の会社についての解散命令の場合とほぼ同様です。
    又、日本の会社債権者保護のため、外国会社の日本所在の財産につき、裁判所の命令により開始する清算手続きの制度が用意されています。
  5. 擬似外国会社
    日本に本店を置き、又は日本で事業を行なうことを主たる目的とする外国会社は、日本において取引を継続して行なうことはできません。
    これに違反して取引をした者は、相手方に対し、外国会社と連帯して、その取引によって生じた債務を弁済する責任を負います。

擬似外国会社については、どのような見直しが行われましたか?

一.旧商法482条

  • 日本に本店を設け又は日本において営業を為すを持って主たる目的とする会社は外国において設立するものといえども日本において設立する会社と同一の規定に従うことを要す
  • 本条の趣旨は、日本法の規定を回避するために故意に外国法に従って会社を設立しようとする一種の脱法的行為を防止する事にあります。
二.裁判例
 東京地判昭和29年6月4日(判タ40-73)
  • 「同一の規定」には、会社の設立に関する規定を含むものとし、擬似外国会社は日本の商法が定める会社設立の要件を具備しない限り、その成立が認められず(大審院大正7年12月16日民録9-24-2326)、擬似外国会社が旧商法479条により外国会社としての営業所の設置手続きを行なう事はできない。
    したがって、裁判例においてとられている考え方に従うと
    (1)擬似外国会社の法人格は認められず、擬似外国会社が法人として取引する事は一切できず、
    その結果
    (2)擬似外国会社が取引をした場合には、代表者が個人責任を負うことになります。
三.改正の経緯
  1. 擬似外国会社が、日本法で定める手続きに従い再設立されなければ、その法人格を否認されるという事は、法的安定性の点から問題となります。
  2. そこで、新会社法では、現行法と同様に日本の会社法の潜脱を看過することは適当ではないという価値判断は維持しつつ
    (1)の点については、擬似外国会社であっても法人格を認める事とし、
    (2)の点については、現行法において認められている効果を明確にする規定として、擬似外国会社は日本において取引を継続することができない旨を定めています。
    また、これに違反して取引をした者は、相手方に対して、外国会社と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う旨の規定を設けています。

新株発行、自己株式の処分、新株予約権発行の無効の訴えの提訴期間についてはどうなりましたか?

一.旧法

  1. 新株発行無効の訴えの提訴期間は、すべての株式会社について6ヶ月とされています。
  2. しかしながら、株式譲渡制限会社において、株主総会が開かれないで新株発行が為された場合は、株主総会が開かれるまでは、株主が新株発行の事実を知る機会は乏しいといえます。
  3. 結局、株主がその事実を知らずに、6ヶ月の提訴期間を徒過してしまう可能性が大いにあります。
二.株主保護の必要性
  1. 株式譲渡制限会社においては、必ずしも株主の移動が頻繁ではないことのほうが多いのが現実です。
  2. 新株発行等が無効とされてもそれによる弊害が大きくないと考えられる事から、類型的に株主の保護をより重視すべきであるといえます。
三.新会社法
  1. 株主総会は年一回開催しなければならないものとされています。
  2. そこで、株式譲渡制限会社においては、新株発行無効等の提訴期間を一年に延長して、株主の保護を図る事にしました。
  3. さらに、新株発行と類似する自己株式の処分の無効の訴え、新株予約権発行の無効の訴えについても、新株発行と同様の提訴期間の規定を設けています。

新株発行、自己株式処分、新株予約権発行の不存在確認の訴えを新設することとしたのは何故ですか?

一.旧商法

  1. 明文の規定はありませんが、解釈として、新株発行の訴えに準じて「新株発行不存在確認の訴え」が認められ、この訴えは、新株発行無効の訴えと同様、会社を被告としてのみ提起することができます。
  2. そして、出訴期間の制限はありません。
二.新会社法
  1. 旧法上の解釈において認められている新株発行不存在確認の訴えについて、それが可能であることについて、明文で規定を設けています。
  2. これに合わせて、自己株式の処分及び新株予約権の発行についてもその不存在確認の訴えが可能であることを 明らかにしています。
  3. 新株発行の不存在確認の訴えについては、先に述べたように旧商法上明文の規定はありませんが、判例では、このような訴えも認められています。
  4. もっとも、その訴えの手続き、効力については、判例上必ずしも明らかになっていません。
  5. したがって、その点を明確にする必要があるといえます。
  6. また、株式の発行と同様の取り扱いがされる自己株式の処分及び株式の発行に準ずるものといえる新株予約権の 発行については、その不存在確認の訴えを認める裁判例はありませんが、否定する理由もないので、これらについても明文で規定されました。
  7. 新株発行の不存在確認の訴えについては、判例上、提訴期間の制限が無いと考えられていますので、法律上も提訴期間を設けませんでした。
  8. 又、確認の利益を有するものであれば、この訴えを提起することができることから、提訴権者についても、明文でこれを制限する規定を設けていません。
  9. 新株発行の不存在確認の訴えの被告については、株式を発行したと主張する株式会社としています。
  10. 又、新株発行不存在確認訴訟では、担保提供命令、弁論等の必要的併合、判決の対世効、原告が敗訴した場合についての損害賠償責任等に関する規定が適用されます。
  11. ただし、新株発行の不存在の確認の訴えは、もともと新株発行が存在しなかったことを確認するものであり、形成訴訟ではないので、将来効の規定は適用されません。

〈参考〉

※ 会社法839条(無効又は取消しの判決の効力)会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する判決が確定した時は、当該判決において無効とされ、または取り消された行為は、将来に向かってその効力を失う。
※ 最判平成9年1月28日(民集51?1?40〈百選73〉)「商法の明文の規定を欠いてはいるが、新株発行無効の訴えに準じて新株発行不存在確認の訴えを肯定する余地があり、この場合、新株発行無効の訴えに対比して出訴期間、原告適格等の訴訟要件が問題となるが、この訴えは少なくとも、新株発行無効の訴えと同様に、会社を被告としてのみ提起することが許されるものと
解すべきである。」
※ 最判平成15年3月27日(民集57-3-312)〈商判2-79〉
判示事項:
  1. 新株発行不存在確認の訴えの認められる場合
  2. 新株発行不存在確認の訴えの出訴期間  
要旨: 
  1. 新株発行の実体がないのにその外観が存する場合には,新株発行不存在確認の訴えにより,対世効のある判決をもってその不存在の確定を求めることができる。 
  2. 新株発行不存在確認の訴えに出訴期間の制限はない。

NPO法人とはどのようなものですか?

NPO(‘Non Profit Organization’)法人とは、法的には「特定非営利活動法人」といいます。
あの阪神淡路大震災以降の市民活動の高まりを契機に、市民団体にも簡易に法人格を与えようという機運が高まり、平成10年12月1日に施行された「特定非営利活動促進法」に基づく法人のことです。

NPO法人格を取得すると、どのようなメリットがありますか?

福祉、環境、まちづくりなどの様々な分野で、ボランティア活動等による社会貢献活動が活発化し、その重要性が認識されてきましたが、それらを行う民間の団体の多くは法人格を持たない任意団体として活動してきました。そのため、事務所を借りたり、銀行口座を開設したり、不動産登記や電話の設置などの法律行為を団体名義で行うことができず、様々な不都合が生じていました。
そこで、この法律により法人格を得ることにより、これらの不都合が解消され、また社会的信用も高まるため、行政や企業などの支援が得やすくなるなど、活動の幅を広げるのに有利となるでしょう。

NPOとNGOの違いは?

 NGOはNon-Governmental Organization’の略で、「非政府組織」と訳されますが、団体の活動内容は営利目的ではなく、社会貢献を使命としており、また政府系機関ではなく、民間の団体であるという点ではNPOと同義です。
団体のどの側面を強調するかによって使い分けられているようで、国境を越えて活動する団体はNGOと表現されることが多いようです。海外などで政府とは違う民間の立場を強調したのがNGOで、営利目的ではない社会的存在を強調したのがNPOと言えます。
法人格で言うとNPO法人は存在しますが、NGO法人というものはありません。
NGOとして有名なAMDAやピース ウィンズ・ジャパンもNPO法人です。
NGOとして活動する団体の法人格は他には社団法人や財団法人などがあり、宗教法人なども該当する活動を行っているところもあります。

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