持分会社とは何ですか?

一.持分会社
 新会社法は、合名会社と合資会社に加えて、新たに全ての社員が有限責任社員である合同会社(日本版LLC)を創設し、これら3つの種類の会社を「持分会社」という1つの類型に整理して、規制を整備しなおしました。
二.持分会社の特徴

  1. 内部関係(社員間および社員・会社間)の規制については原則として定款自治が 認められその設計が自由であること
  2. 機関について株主会社のような規制がないこと(取締役のような機関の設置は強制されない)
  3. 社員の議決権は原則として1人1議決権であること
  4. 持分の譲渡には原則として他の社員全員の承諾が必要であること等の点にあります。

三.合名会社・合資会社についての見直し

  1. 旧法では、合名会社の社員が1人となった場合には当然に解散するものとされています。
  2. 新会社法では、会社の継続を容易にするために、社員が1人になっても解散しないこととしています。
  3. 旧法では、法人が合名会社や合資会社の無限責任社員になることを禁止しています。
  4. 新会社法では、法人もこれらの者になることを認めると共に、法人が合名会社等の業務を 執行する場合における当該法人の職務を行なう者の指定など所要の措置を講じることとしています。
  5. 合名会社・合資会社の社員の利益を適切に保護するために、会社の業務を執行しない社員が、 業務を執行する社員の責任を追及する訴えを提起できる事とする制度を整備することとしています。

四.法人を、社員として認めた理由

  1. 旧法上の法人への規制は、合名会社等は人的信用を基礎とするものである事を理由にしていますが、 法人も他人の保証人になるなど、信用を供与することができ、合理性のある規定とはいえません。
  2. そこで、新会社法では、法人が合名会社の社員等になることを認めた上で、法人が社員となることにより、 他の社員や会社債権者が不当に害されることのないように、その職務執行者の指定や、 責任に関する規定を整備することとしています。

五.持分会社に、一人会社を認めた理由

  1. 株式会社においては、一人会社が認められていますが、社団性との関係においては、 一人株主の意思で株式を譲渡すれば社員が複数になりうることから、一人会社であっても 社団性を失わないという説明が可能です。
  2. 持分会社は、社員の個性が重視されるにしても
    (1)社員の加入や持分の一部の譲渡により、社員が複数になりうること
    (2)これらが一人社員の意思で行ないうることという点においては、株式会社と変わることがありません。
    (3)したがって、一人持分会社を認めても、直ちに社団性に反するとはいえず、これを認めない合理的理由もないので、新会社法においては、これを認めることとしました。

合同会社(日本版LLC)とはなんですか?

一.LLC

  1. もともとLLCとは、
    (1)全社員が有限責任で
    (2)法人格があるのに
    (3)パススルー性が認められ
    (4)内部ルールは構成員間で自由に決める事ができる事業主体です。
  2. アメリカにおけるLLCは、小規模会社に私法上というよりむしろ税法上の恩恵を与える事を 目的として導入された組織形態です。
  3. そして、一定の要件を満たす事により、会社としての課税ではなく、構成員としての課税を受ける ことが出来るものです。

二.合同会社(日本版LLC)とは

  1. 合同会社(日本版LLC)は、今回の会社法の現代化の過程において新しく設けられた会社形態です。
  2. 内部関係においては、組合的な規律が適用されながら、対外的には社員全員が有限責任しか 負わないという特徴を有しています。
  3. 今回の新会社法ではパススルー課税は見送られています。

三.合同会社(日本版LLC)の特徴

  • 会社の内部関係について組合的規律が適用される2.社員全員が会社債務について有限責任3.会社として法人格を有する4.出資は金銭出資と財産出資に限られる5.計算に関する規定、および剰余金の分配に係る財源規制等については株式会社と同様の規制が課される6.社員が一人しかいない、いわゆる一人会社が認められる7.決算公告をする必要が無い

四.株式会社と合同会社(日本版LLC)の違い

  1. 会社内部の規律の強行規定性について
    (ア)株式会社
     社員の意思決定機関としての「株主総会」を設け、業務執行者として社員とは異なる「取締役」等の機関を設ける必要性があるほか、株主の権利内容も、原則として平等原則が適用され、これらの規律は強行規定とされています。
    (ロ)合同会社(日本版LLC)
     組合と同様に、広く契約自由の原則が妥当するため、機関設計や社員の権利内容については強行規定がほとんど存在せず、広く定款自治に委ねられています。
  2. 持分の譲渡に関する規律について
    (ア)株式会社 社員たる株主の個性を問わないため、基本的に株式の譲渡自由の原則が採用されています。
    (イ)合同会社(日本版LLC) 社員間の人的繋がりが強く、誰が社員になるかは他の社員に重大な利害関係を生じるため、持分の譲渡については、原則として他の社員の全員一致が要求されています。

五.合同会社(日本版LLC)と有限責任事業組合(LLP)との違い

  1. 共通点
    合同会社(日本版LLC)と有限責任事業組合(LLP)とは、いずれもその社員または組合員の全員が有限責任とされ、会社又は組合の内部関係について組合的規律が適用される点については共通しています。
  2. 相違点
    (ア)合同会社は、法人格を有するのに対し、有限責任事業組合は、その本質が組合契約であり法人格を有しません。したがって、合同会社は対外的安定性において、相対的に法的安定性が高いといえます。
    (イ)合同会社に関しては、必ずしも社員全員が業務執行を担当する必要性はありませんが、 有限責任事業組合は、すべての組合員が何らかの形で業務の執行に携わる事が必要です。
    (ウ)合同会社は社員が一人になっても存続が可能ですが、有限責任事業組合は、構成員が一人では存続できません。
    (オ)合同会社に関しては、合同会社から株式会社に組織変更することも、株式会社から合同会社に 組織変更することも可能ですが、有限責任事業組合に関しては、株式会社等との会社との間での 組織変更はできません。
    (カ)合同会社に関しては、株式会社等との会社との間の合併等の組織再編行為をする事は可能ですが、有限責任事業組合に関しては、株式会社等との会社との間における組織再編行為は認められていません。

合同会社の債権者保護のための手続きはどうなっていますか?

一.合同会社は、人的会社であるにも拘わらず、全社員が有限責任しか負わないため、その債権者の保護は重要な問題です。
二.新会社法においては債権者保護のために

  1. 会社の財産状況が適切に表示される事
  2. 会社に適切に財産が留保される事を求めています。

三.具体的には、

  1. 貸借対照表・損益計算書を作成しなければならない
  2. 合同会社の社員は、その閲覧・謄写の請求ができる
  3. 登記においては、目的、資本金の額、業務を執行する社員および合同会社を代表する 社員の氏名等、合同会社に関する基本的な事項を登記し、公示すること等の措置を講じています。

四.会社に適切に財産が留保されるようにするために

  1. 社員の出資については全額払込み制度を採用
  2. 社員の出資の目的は、金銭その他の財産に限る
  3. 利益の配当等に関しては、株式会社と同様の財源規制を課する事としています。

日本版LLP(有限責任事業組合)とは何ですか?

一.LLPとは

  1. LLPは、株式会社や有限会社とならぶ、「有限責任事業組合」という、新たな事業体をいいます。
  2. 具体的には
    (1)構成員全員が有限責任で
    (2)損益や権限の分配を柔軟に決める事ができるなど内部自治が徹底し
    (3)パススルー課税(構成員課税)の適用をうけるという、特徴を兼ね備えています。
  3. 構成員全員が無限責任の民法組合の特例として、今般「有限責任事業組合契約に関する法律」 によって制度化されました。

二.LLPの活用分野

  1. LLPの活用分野として想定されるのは次に掲げる分野があります。
  2. 大企業同士が連携して行なう共同事業(共同研究開発、共同生産、共同物流、共同設備集約など)
  3. 中小企業同士の連携(共同研究開発、共同生産、共同販売など)
  4. ベンチャー企業や中小・中堅企業と大企業の連携(ロボット、バイオテクノロジーの研究開発など)
  5. 異業種の企業同士の共同事業(燃料電池、人工衛星の研究開発など)
  6. 産学の連携(大学発ベンチャーなど)
  7. 専門人材が行なう共同事業(ITや企業支援サービス分野:ソフトウエア開発、 デザイン、経営コンサルタントなど)
  8. 企業家が集まり共同して行なう創業
  9. 農業や街づくりといった分野でのあらたな事業展開等が想定されています。

三.LLPの立ち上げ・運営の要件

  1. 1.組合契約書の作成
    LLPの組合員は、組織の基本事項を契約書に掲載し、全員で署名又は記名・押印します。 掲載が義務付けられる基本事項(絶対的記載事項)
    (ア)名称
    (イ)事業内容
    (ウ)事務所の所在地
    (エ)構成員の氏名・名称・住所
    (オ)出資の目的と価額
    (カ)契約の効力発生の年月日
    (キ)存続期間
    (ク)事業年度
  2. 組合契約の登記
    LLPは、組合契約書の作成と組合員の出資の払い込みの後に、LLP契約の登記をする事で 立ち上げの手続きが完了します。

    登記事項
    (ア)名称
    (イ)事業内容
    (ウ)構成員の氏名・名称・住所
    (エ)事務所の所在場所
    (オ)存続期間など
  3. 開示義務
    (ア)「有限責任事業組合」という名称の表示義務(正式な書面での義務であり、たとえば名刺や看板などで「LLP」を使う事は可能です。)
    (イ)債権者保護の観点から損益計算書、貸借対照表等を作成し、債権者の求めに応じて開示又、債権者保護に関しては、組合財産分配規制などの規制があります。
  4. 共同事業要件
    債権者保護の観点から、LLPの構成員は事業上の意思決定と業務執行への参加が義務付けられています。

その理由は、LLPは、組合契約に基づき、組合員全員がそれぞれの個性や能力を活かしつつ、共通する目的に向かって主体的に組合事業に参画するという制度のニーズに基づいた制度だからです。(なお、業務執行を組合員間で分担する事は可能です。)

パスツール課税とはなんですか?

一.パススルー課税

  1. パススルー課税とは、法人または事業組織体そのものに対しては課税せずに、その出資者に対して(現実に配当がおこなわれるか否かにかかわらず)当該法人または事業組織に生じた損益について 課税するというものです。
  2. こうした課税方式は、法人段階への課税に加えて出資者への配当に対して課税するという 二重課税が回避できるだけでなく、ベンチャー事業を行なう際に、初期の投資による損失と 出資者の利益との通算が可能となり、出資者の節税にもなる事があるため、リスクの高い 共同事業へ参加しようというという出資者のインセンティブを高める事が期待できるといわれています。
  3. 有限責任事業組合制度は、こうしたパススルー課税を実現するために導入されようとしていると 考えられています。

二.有限責任事業組合と合同会社制度との相違

  1. 有限責任事業組合は、あくまでも特別法上の組合であり、法人格はありません。 したがって、他の会社類型への組織変更はありえません。
  2. この点、合同会社は会社法上の会社であり、法人格を有しているので、株式会社等への 組織変更が可能です。また、会社として知的財産や許認可等の帰属主体となる事も可能です。
  3. したがって、会社として、知的財産や許認可等を有しておきたい場合や、将来を見据えて事業の拡大、 上場等を考えている場合は、合同会社の利用が良いように思われます。
  4. いずれにしても、有限責任事業組合制度については、合同会社が持つ利点に加えて、 さらに税制上の有利さが加えられている点に特徴があり、そうした利点や特徴を生かして 立法担当者が想定しているようなベンチャー企業等による活発な利用やそれによる産業 の活発化が期待されています。

以上をまとめると

合同会社 有限責任事業組合
法人格 あり なし
構成員課税 なし あり
業務執行の全部委任 できる できない
構成員一人での存続 できる できない
株式会社等への組織変更 できる できない
株式会社等との合併 できる できない

※参議院法務委員会で「合同会社における課税については、会社の利用状況、運用実態等を踏まえて、必要があれば、対応措置を検討する事」との附帯決議がなされています。

社債についてはどのような見直しが行われましたか?

一.社債とは

  1. 旧法は、社債についての定義規定を置いていません。
  2. 新会社法では、社債を 「この法律の規定により会社が行なう割当により発生する当該会社を債務者とする金銭債権であって、676条各号に掲げる事項〔募集事項〕についての定めに従い償還されるものをいう」と定義しました。
  3. また、新会社法では、会社法上の全ての会社が社債を募集形態で発行する事ができることを 明らかにしました。

二.募集社債の発行にあたっては

  1. 場集社債の総額
  2. 各募集社債の金額
  3. 募集社債の利率
  4. 募集社債の償還の方法および期限
  5. 利息支払の方法及び期限
  6. 社債券を発行する時はその旨
  7. 記名式社債と無記名式社債の転換制限の定め
  8. 社債管理者が社債管理者集会の決議によらずに訴訟行為や法的倒産処理手続きをできるとする時はその旨
  9. 各募集社債の払込金額もしくはその最低金額またはこれらの算定方法
  10. 募集社債と引き換えにする金銭の払い込みの期日
  11. 打切発行の定め
  12. その他法務省令で定める事項を定めなければなりません。

三.社債に係る規律の見直し

  1. 会社の資金調達の円滑化の観点から、取締役会を設置する株式会社にあっては、取締役会では 償還の金額及び利率の上限ならびに社債の発行価額の下限のみを決議する事で足り、 具体的な額等の決定を代表取締役に委任することができることとしています。
  2. また、近時、社債発行会社が債務不履行に陥る事例が増加し、社債発行会社に対して 貸付債権等の債権を有する社債管理者と社債権者との利益相反が尖鋭化するような事態が 現実問題化しているという指摘を踏まえ、社債管理者の責任を強化する事としました。

社債管理会社の権限と責任についてはどう変更されましたか?

一.社債管理者

  1. 株式会社が、社債を発行するためには、取締役会設置会社では取締役会の決議が必要です。
  2. 又、原則として、社債管理者(現行商法では社債管理会社と呼んでいます)を設置し、 社債権者の為に社債の管理を委託しなければなりません。
  3. 例外として、各社債の金額が1億円以上である場合その他法務省令で定める場合には、 社債権者の設置は不要です。
  4. なお、社債権者になれるのは、銀行・信託会社またはこれに準ずる者として法務省令で定める者に 限られます。
  5. 証券会社は、社債管理者になれません。

二.旧法

  1. 社債管理会社は、法律によって与えられる権限を誠実に行使することで「社債の管理」を果たせます。
  2. ただし、社債発行会社の資力に不安が生じて、社債の償還や利息の支払を怠ったり、 また支払の停止などがあったときについては、その前の3か月間に社債管理会社が 社債発行会社から貸付金の返済を受けるなどしていた場合などには、 自らが誠実に権限を行使したことなどを証明しない限り、社債権者に対して損害賠償責任を負います。
  3. また、社債管理会社は、社債発行会社と社債発行権者集会の同意がない限り、原則として辞任することが できません。
  4. 加えて、社債管理会社は、社債権者集会の決議がない限り、総社員について訴訟行為と 法的倒産処理手続きに関する行為をすることができません。

三.新会社法

  1. 「社債管理会社」の名称が、会社以外の者が含まれる可能性があるため「社債管理者」に変わります。
  2. 社債管理者は、社債発行会社との間の社債管理委託契約に基づく権限に関しても善管注意義務を 負います。
  3. 社債管理者が負う損害賠償責任の範囲が拡大します。
  4. 社債管理者は、社債管理委託契約等に規定がある場合には、社債権者集会の決議がなくても、 訴訟行為と法的倒産処理手続きに関する一切の行為をすることができます。
  5. 減資等、債権者保護手続きが必要になる場合は、社債管理者に対しても催告をしなければならず、 社債管理者は、債権者保護手続きにおいて異議を唱える事ができます。
    旧法上は、社債権者が異議を述べるためには社債権者集会の決議が必要とされています。
    しかしながら、社債権者集会の決議、更には裁判所の決定手続きが必要となると、 意義を述べる事が事実上困難となり、社債権者の利益が害されるとの指摘がなされていました。
    そこで、新会社法では、社債管理者がある場合には、会社は社債管理者に対しても催告を行なう 事ができることとしたうえで、社債管理者委託契約等に別段の定めがある場合を除き、 社債管理者は、社債権者の為に、異議を述べる事ができることとして、社債権者の利益を確保する事と しました。
  6. 社債管理者が訴訟行為や法的倒産処理手続きに関する行為をしたとき、 辞任後に事務を引き継ぐ者を決めておけば、株式会社が社債に関する期限の利益を喪失した場合 の公告と通知は不要となります。

異なる会社間の組織変更はどのような手続きで行なわれますか?

一.組織変更

  1. 会社の組織変更とは、会社が法人格の同一性を保ちつつ、別の類型の会社になることを言います。
  2. したがって、
    (1)株式会社から持分会社への組織変更と
    (2)持分会社から株式会社への組織変更があります。
    (3)なお、合名会社・合資会社・合同会社間の変更は、「持分会社の種類」の変更に過ぎず、組織変更にはあたりません。

二.組織変更の手続き

  1. 1.株式会社が持分会社に組織変更する場合
    (1)組織変更計画の作成
    (2)組織変更計画に関する書面等の備置き及び閲覧等
    (3)総株主の同意
    (4)登録株式質権者および登録新株予約権質権者への通知または公告
    (5)新株予約権買取請求
    (6)債権者保護手続き
    (7)組織変更の登記
  2. 持分会社が株式会社に組織変更する場合
    (1)組織変更計画の作成
    (2)総社員の同意
    (3)債権者保護手続き
    (4)組織変更の登記
  3. なお、持分会社内での会社の種類を変更する場合は、組織変更の手続きではなく、定款変更の手続きをする ことになります。

三.組織変更の無効

  1. 組織変更無効の訴えが用意され、この訴えによってのみ無効を主張する事ができます。
  2. 組織変更を無効とする判決が確定すると、変更前の会社に復帰します。

組織再編行為には、どのようなものがありますか?

一.新会社法における組織再編行為

  1. 組織変更
  2. 吸収合併
  3. 新設合併
  4. 吸収分割
  5. 新設分割
  6. 株式交換
  7. 株式移転の7種類の組織再編行為が認められています。

二.組織変更

  1. 会社の組織変更とは、会社が法人格の同一性を保ちつつ別の類型の会社になることをいいます。
  2. 株式会社から持分会社への組織変更、持分会社から株式会社への組織変更のいずれもが認められます。

三.合併

  1. 会社の合併とは、2つ以上の会社が契約によって、1つの会社に合体する事をいいます。
  2. 当事会社の1つが存続して他の消滅する会社を吸収する場合を吸収合併といいます。
  3. 当事会社の全ての会社が消滅して新しい会社を設立する場合を新設合併といいます。
  4. 全ての種類の会社間における合併が認められます。
  5. 吸収合併においては、株式会社・持分会社のいずれもが存続会社となる事ができます。
  6. 新設合併においても、株式会社・持分会社のいずれもが、新設会社となる事が認められます。

四.吸収分割・新設分割

  1. 会社分割とは、1つの会社を2つ以上の会社に分ける事をいいます。
  2. 多角経営化した企業がその事業部門を独立させて経営効率の向上を図ったり、不採算部門・新製品開発部門などを独立させたり、他の会社の同じ部門と合弁企業を作るなどの手段として利用されます。
  3. 分割はこのように事業の再編に使われますが、事業の売却(買収)や企業の提携の手段として利用される場合もあります。
  4. 株式会社のほか、合同会社が分割会社となる事ができます。
  5. 合名会社・合資会社は分割会社となる事はできません。
  6. 吸収分割・新設分割における承継会社には、すべての種類の会社がなる事ができます。

五.株式交換・株式移転

  1. 株式交換・株式移転とは、ある株式会社がその株主総会の特別決議の承認等により他の会社の100%子会社となる取引をいいます。
  2. その親会社となる会社が既存の会社である場合を「株式交換」といい、新設会社である場合を「株式移転」といいます。
  3. 2社以上が共同で株式移転する事も可能で、共同株式移転といいます。
  4. この制度は、持株会社の設立を容易にするために、平成11年改正で導入された制度ですが、その利用は持株会社設立だけに限られるわけではなく、企業買収の手段などとしても利用することができます。
  5. 合名会社および合資会社は、株式交換における完全親会社となる会社となる事ができません。
  6. 持分会社は株式移転における完全親会社となる新設会社になる事ができません。

対価柔軟化とは何ですか?

一.対価柔軟化

  1. 対価柔軟化とは、吸収合併等の場合において、消滅会社の株主等に対して、存続会社の株式を交付せず、金銭その他のものを交付する事ができるものとすることをいいます。
  2. 新会社法においては、吸収合併、吸収分割、株式交換において対価柔軟化を認めています。
  3. これに対し、新設合併、新設分割、株式移転については、対価柔軟化は認められていません。


二.対価柔軟化の導入の理由

  1. 旧法
    合併、会社分割、株式分割、株式交換、株式移転に際して、消滅会社の株主、 分割会社またはその株主、完全子会社となる会社または組織再編行為により設立される 会社の株主に対して交付される財産は、原則として、存続会社、承継会社、完全親会社となる会社 または組織再編行為により設立される会社の株式に限定される事を前提として、各種の規律が設けられ ています。
  2. 新会社法
    (1)しかし、選択と集中を目指した事業の再編の必要性の高まり、買収、事業統合等を含む企業活動の国際化等を背景として、主として経済界から組織再編の対価の柔軟性を求める声が強くなってきました。
    (2)具体的には、いわゆる三角合併といわれる、子会社が、他の会社を吸収合併する場合にその親会社の株式を交付する場合や、交付金合併(キャッシュ・アウト・マージャー)といわれる、消滅会社の株主に現金のみを交付する合併、交付金合併を用いた公開会社の非公開会社化あるいは完全子会社化(ゴーイング・プライベート)などの要望があります。
    (3)特に、交付金合併については、閉鎖会社を存続会社とする合併において、存続会社の株主にとっては株主構成を変えずに合併が行えるばかりか、解散会社の株主にとっても市場性のない株式よりは現金の交付を受ける方が良いので、実務上メリットが大きいと言われてきました。
    (4)このような状況を踏まえ、新会社法においては、吸収合併、吸収分割、および株式交換において、消滅会社の株主等に関して、存続会社の株式を交付せず、金銭その他の財産を交付する事を認める事としています。

三.三角合併
(キーワード)
 三角合併

  • 三角合併とは、存続会社が消滅会社の株主に対して、存続会社自身の株式ではなく、存続会社の親会社の株式を交付する方法をいいます。
  • つまり、合併対価は親会社株式ということになります。
  • これにより、国内の会社同士は勿論、クロスボーダーでの買収が可能になるといわれていますが、現時点では税の繰り延べ措置が手当てされていません。

 キャッシュ・アウト・マージャー

  • 合併等対価の柔軟化の一形態であり、消滅会社の株主に、合併の対価として、金銭のみを交付する吸収合併をいいます。
  • これにより、買収会社Aが対象会社Cを100%子会社化したいと望む場合は、まず、買収会社Aは完全子会社Bを新設または設立します。
  • 次に、完全子会社Bによる対象会社Cの株式に対する公開買い付けを実施して対象会社Cの議決権を取得します。
  • そのうえで、完全子会社Bと対象会社Cとの間で金銭のみを交付する合併を行なえば、対象会社Cの少数株主を排除して対象会社Cを買収会社Aの完全子会社とすることが可能となります。

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