委員会設置会社において、取締役が使用人を兼務できないとする理由について

一.旧法

  1. 監査役設置会社において、取締役が使用人を兼務できないとする事は認められており、 実務上も広く行なわれています。
  2. しかしながら、委員会等設置会社においては、取締役は、業務執行機関である執行役の 監督を主たる職責としていますが、このような取締役が執行役を兼ねると、 執行役の指揮命令を受けるべき立場にある使用人が当該執行役を監督するようになってしまいます。
  3. このような使用人兼取締役が委員会等設置会社において認められるかどうかについては 議論が分かれていました。

二.新会社法

  1. 新会社法では、監督と執行との分離を図ることに、比重をおいています。
  2. 取締役会の監督機関としての役割を重視した委員会設置会社の制度趣旨を徹底させるため、 委員会設置会社においては、取締役が使用人を兼務する事を明文上禁止しました。

三.報酬委員会が、使用人兼業務執行役の使用人として受ける給与等についても決定する事ができるとした理由

  1. 旧法
    (ア)委員会等設置会社においては、報酬委員会が、取締役および執行役が受ける個人別の報酬 の内容を決定する権限を有します。
    (イ)他方、使用人の給与等については、従業員の報酬規定の決定が会社の業務執行の一環であるため、 原則として執行役がこれを定めます。
    (ウ)したがって、旧法では、執行役が使用人を兼務する場合には、報酬委員会は、 執行役の報酬のみを決定し、使用人の給与等については、執行役において定める事となっています。
    (エ)しかしながら、委員会設置会社の制度趣旨は、取締役会全体に対する監督機能を 強化しようとする点にあります。
    (オ)つまり、執行役が受けるあらゆる種類の報酬について、社外取締役が過半数を占める独立性の 高い報酬委員会で決定できてはじめて、この制度趣旨が全うされるといえます。
  2. 新会社法
    (ア)そこで、新会社法では、委員会設置会社においては、報酬委員会が、使用人兼執行役の 使用人として受ける給与についても決定する事ができることとしました。
    (イ)なお、新会社法では、委員会設置会社の取締役は使用人と兼務する事ができないので、 使用人兼務取締役の報酬に関する問題はなくなっています。

会計帳簿については、どのような見直しが行われましたか?

一.新会社法第432条
1項 株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
2項 株式会社は、株式会社の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。

二.経緯

  1. 会計帳簿の作成については、会計帳簿に記載すべき事象が発生した場合は、適時にこれを記帳すべきものなのですが、実際には、1年に1回税務申告時にまとめて記帳するという事も多いようです。
  2. しかし、このような、適時性を欠いた記帳は、記帳時に数字を人為的に調整する事などの不正が行なわれる事が往々にして起こりがちです。
  3. そこで、新会社法では、このような不正が行なわれる温床となりかねない慣行を戒めるために、会計帳簿を「適時に」作成する事を明文で規定しました。
  4. また、会計帳簿の記載事項の正確性については会計帳簿およびこれに基づき作成される貸借対照表等の計算書類の適正性を確保し、株主、債権者等を保護するためきわめて重要です。
  5. 国際的に見ても、明文で記載の正確性を求める規定を、置いている例も見受けられます。
  6. そこで、新会社法でも当然の内容とされている正確性について、明文の規定を置くことにしました。

計算書類の種類および記載事項についてはどのような見直しが行われましたか?

一.計算書類

  1. 会社は、定款所定の決算期ごとに、その営業年度に関する
    (1)計算書類(貸借対照表、損益計算書、その他、会社の財産、および損益の状況を示すために必要かつ、適当なものとして法務省令でさだめるもの)
    (2)事業報告
    (3)これらの附属明細書を作成して、監査役の監査を受け、これを取締役会で承認したうえで、計算書類と事業報告を定時株主総会に提出して、事業報告についてはその内容を報告し、計算書類については総会の承認を求めなければならないのが原則です。
  2. ただし、会計監査人設置会社では、計算書類について、会計監査人と監査役会の適法意見が有り、これを不相当とする監査役の意見の付記がないときは、総会の承認を求める必要はなく、それらの内容の報告をすれば足ります。
  3. 計算書類の種類と内容、資産の評価等、計算書類・事業報告・附属明細書の方式については、法務省令で定められます。

二.旧法

  1. 旧法上は、条文の規定の上では、「計算書類」という用語は存在しません。
  2. しかし、通例としては、貸借対照表、損益計算書、営業報告書、利益処分案(損失処理案)をさして、「計算書類」と呼ぶ事が多いといえます。

三.新会社法

  1. 新会社法では、「計算書類」の用語を定義し、以下のように整理しています。
    (ア)利益処分案(損失処理案)のなかに盛り込まれる事項については、剰余金の配当、役員の賞与、資本の部の係数変動、等に分解したうえで、決算の確定手続きとは無関係に随時行なうことができる、として整理しているので、新会社法上は、利益処分案(損失処理案)は、存在しません。
    (イ)営業報告書については、その記載される内容が必ずしも計算に関するものとは言えない事から、定義される「計算書類」のなかには含まれていません。
    (ウ)従来は損益計算書の末尾および附属明細書に記載されていた内容や、これまで計算書類等には記載されていなかった内容も含め、別途の書面として独立させることとし、これを株主変動計算書として、「計算書類」のなかに含める事としました。

結計算書類については、どのような見直しが行われましたか?

一.連結計算書類

  1. 今日の企業、なかんずく大企業にあっては、一企業単独で成り立っている企業はほとんど存在せず、ほぼ全ての企業が何らかの形で、企業「群」を形成しています。
  2. したがって、企業の真の実力を把握するためには、一企業だけでは、不十分で企業「群」全体を捉えることが不可欠であるといえます。
  3. ところが、従来、日本では商法上はあくまで単独の決算を前提に制度が作られていました。
  4. その結果、業績の悪化した企業が、それを隠すために、親子会社や関連会社を通じ計算内容を操作する事がしばしば行なわれていました。
  5. このような、不祥事を排し、又、連結決算による企業評価が国際基準に近づくために、いわゆる会計ビッグバンの一環として2000年3月期から連結決算に大幅な変更が加えられ、商法においてもいわゆる大会社においては、連結決算が原則とされました。
  6. 平成14年改正は、連結計算書類制度を導入し、会社法もこれを引き継いでいます。
  7. この制度は、情報提供の充実を図るために導入されたものであり、剰余金配当規制は従来どおり単体の貸借対照表を基準とします。
  8. 連結計算書類とは、「その会社及びその子会社からなる企業集団の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるもの」をいいます(現行では、連結貸借対照表と連結損益計算書をいいます)。

二.旧法

  1. 旧法では、商法(商法特例法)上の連結書類を作成できるのは大会社のみです。
  2. したがって、たとえば、証券取引法による開示規制に基づき連結計算書類を作成している株式会社であっても、大会社に該当しない場合には、商法(商法特例法)上の連結計算書類を作成して、監査を受け、これを株主に開示する、ということが規定上できません。

三.新会社法

  1. 新会社法においては、会社の規模にかかわらず、会計監査人設置会社であれば、連結計算書類を作成できるとした上で、現行法上連結計算書類の作成義務が課せられている株式会社については、新会社法においても作成義務を課すことにしています。
  2. なお、連結計算書類を作成する事ができる株式会社を会計監査人設置会社に限定したのは、作成される連結計算書類についての専門知識を有する会計監査人を設置している事が必要であると考えられたためです。

利益の配当に関しては、どのような見直しが行われましたか?

一.旧法

  1. 利益の配当の回数は、通常の配当と中間配当の年2回に限られています。
  2. しかし、配当可能額の範囲で配当を行なっている限り、その回数に制限を設ける合理的な理由があるとは思えません。

二.新会社法

  1. 株主に対する利益の還元方法を多様化させて企業価値を高める観点から、利益の配当に回数を設けることなく、年に何回でも利益の配当をすることができることとしています。

三.旧法

  1. 委員会等設置会社においては、取締役会の決議によって通常の配当ができます。
  2. 監査役を設置している株式会社においては、通常の配当を行なうのに株主総会の決議が要求されています。
  3. しかし、委員会の設置と監査役の設置との差によって、配当を行なう際の決議機関を違えるべき合理的理由も見当たりません。


四.新会社法

  1. 1.委員会設置会社以外の会社であっても、
    (1)監査役会設置会社であること
    (2)会計監査人設置会社であること
    (3)取締役の任期の末日が選任後1年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日であるものでないことの要件を満たす会社は、
    (4)定款の定めを置くことにより、
    (5)最終事業年度に係る計算書類が、法令及び定款に従い、株式会社の財産および損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める用件に該当する場合には、取締役会の決議により通常の配当を行なうことができるもの、としています。
    (1)(2)(5)の要件は、剰余金の配当をする場合の分配可能額算定の基礎となる計算書類 の正確性を確保するものです。
    (3)の要件は、取締役会による剰余金の配当方針が株主の意思に沿ったものでない場合に、適切に取締役を選任し、その意思を反映させるためです。
  2. 中間配当について
    以上の要件を備えない会社でも、取締役会設置会社であれば、定款の定めにより、取締役会の決議によって中間配当をすることができます。

分配可能額はどのように算定されるのですか?

一.株主に対して不当に多額の配当が行われると、会社の債権者の利益を害する恐れが出てきます。 そこで、株主に対する配当利益の計算方法等は厳格に規定されています。
二.旧法

  1. 最終の貸借対照表上の純資産額から資本の額や法定準備金の額などを差し引いた額が、配当可能利益となります。
  2. また、分配可能額の算出に期間利益を反映させる事はできません。

三.新会社法

  1. 最終の貸借対照表上の純資産利益から資本の額や法定準備金の額などを引いた額が、配当可能利益となります。
  2. 最終の決算期の貸借対照表から算出された分配可能額に、最終の決算後、分配を行なうまでの間に生じた分配可能額の上限を反映させることになります。なお、分配可能額の上限とは、金銭の分配、資本金の減少等による分配可能額の増減を意味します。
  3. 2.の場合、期間利益による変動は含みませんが、期中に決算手続きに準ずる手続きを行なえば、分配可能額に手続き時までの期間損益を反映させる事ができます。
  4. 純資産額が300万円未満の株式会社は、剰余金を株主に分配する事ができません。

四.改正の理由

  1. 最低資本金制度の撤廃を受けて、債権者保護の見地から剰余金の分配に際して純資産額による制限を加えることになりました。
  2. 株式会社が株主から、有償で株式を取得するという事は、株主に対して債権者に先立って財産を払いだしているという事になります。
  3. したがって、新会社法では、株式会社の財産についての株主と債権者との権利調整という観点から、株主に対する金銭の分配と自己株式の有償取得について、これらを区別することなく統一的に財源規制をかけることになりました。

剰余金の配当に関する責任および期末の填補責任については、どのような見直しが行われましたか?

一.剰余金の配当に関する責任

  1. 旧法
    分配可能額を超えて剰余金の配当をした取締役の責任 (1)監査役設置会社・・・無過失責任 (2)委員会等設置会社・・過失責任当該責任について 株主全員の同意による免除が認められています。
  2. 新会社法
    株式会社の機関設計にかかわらず、これを過失責任としました。
    (理由)
    (1)監査役設置会社と委員会等設置会社という機関設計の差異を持って、個々の業務執行者の責任に差異を設ける合理的理由がない事。
    (2)近代私法の原則である過失責任主義の例外として無過失責任を維持すべき合理的理由もない事。
    当該責任について 分配可能額を超えて分配された部分については、株主全員の同意があっても、その責任の免除をみとめません。
    (理由)
    債権者と株主との間の会社財産の調整機能を果たしている分配可能額に関する規定に違反した場合 において、株主の合意によりその責任の免除を認めるのは合理的ではない事。

二.期末の填補責任

  1. 分配可能額の計算において、最終事業年度の末日後、当該分配時までの間の分配可能額の増減を反映させるために、期末の填補責任の欠損判定時期を、計算書類の確定時としました。
  2. 自己株式を取得した事によって発生する期末の填補責任について、取得した自己株式を当該年度中に処分した場合には当該処分価額を責任額から控除するという旧法の制度を改め、株式会社から流出した財産である取得価額を弁済すべきものとしました。

営業譲渡に関する規制についてはどのような見直しが行われましたか?

一.営業譲渡から事業譲渡への改正

  1. 旧法では「営業」譲渡等としていたのを、新会社法は「事業」の譲渡等と概念を改めました。
  2. これは、他の法人法制との整合性を図り、また、商号との関係を考慮したためと説明されています(個人商人は複数の営業を有し営業ごとに複数の商号を有する事ができますが、会社は全体として1つの商号しか有する事ができません)が、その規制の実質に変更はありません。
  3. したがって、たとえば、現行法における営業概念についての判例の考え方は、そのまま新会社法のもとでの事業概念について当てはまります。

二.簡易組織再編の要件について

  1. 旧法
    ・組織再編行為に際しての株主総会における承認が不要になる簡易組織再編行為手続きの要件につき、・合併、株式交換、吸収分割(承継会社)の場合には、当該組織再編行為に際して新たに発行する 株式数が発行済株式総数の5%、
    ・会社分割(分割会社)の場合は、分割対象の資産の簿価が分割会社の総資産額の5%、
    ・営業全部の譲受けの場合は、営業譲受の対価が譲受会社の簿価純資産額の5%をそれぞれ超えない事が条件とされていました。
  2. 新会社法
    1.事業の重要な一部の譲渡について、吸収分割等における簡易組織再編と同様に、当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価格が当該株式会社の純資産に対する割合が20%以下の場合には、株主総会の決議を不要としました。
    2.他の会社の事業の全部の譲受について、吸収合併、吸収分割における簡易組織再編と同様に、当該他の会社の事業の全部の対価として交付する財産の帳簿価額の合計額の当該株式会社の純資産額に対する割合が20%以下の場合には、株主総会の決議を不要にしました。
    3.これらは、産業再生法においては既に認められていた制度ですが、新会社法によって恒久的かつ一般的な制度として認められることになりました。
    4.これによって、よりスピーディな事業再編・M&Aが促進されるものと期待されています。

三.略式組織再編制度の導入

  1. 新会社法においては、ある会社が他の会社の総株主の議決権の10分の9以上を直接または間接に所有している場合の、当該「ある会社」を「他の会社」にとっての「特別支配会社」と定義しています。
  2. 特別支配会社と被特別支配会社との組織再編行為については、被特別支配会社における株主総会における決議を省略する事ができます。
  3. 産業再生法においては、認定を受けた事業者が3分の2以上の議決権を有する子会社との間で行なう組織再編や、そのような子会社同士で行なう組織再編については、当該子会社の株主総会決議は不要とされていますが、新会社法においては、この基準が引き上げられた上で、恒久的かつ一般的な制度とされました。
  4. ただし、当該略式組織再編の条件が著しく不当であるなど、株主が不利益を受ける恐れがあるときは、少数株主は、略式組織再編をやめるよう請求する事ができます。

四.事業譲渡の際の競業禁止に係る特約の範囲

  • 事業譲渡の際の競業禁止に係る特約の効力が制限される範囲について、「同府県および隣接府県」という限定を設けないものとしました。

事後設立に関する規制については、どのような見直しが行われましたか?

一.事後設立における検査役の調査制度の廃止

  1. 事後設立
    ・事後設立とは、会社の設立後2年以内に、会社の設立前から存在する営業用の財産を 一定の割合以上の価額で取得する事をいいます。
  2. 旧法
    (1)旧法では株式会社の設立前から存在する財産を、会社設立後2年以内に資本金の1/20以上の対価で取得〈事後設立〉する場合には、株主総会の決議に加えて、裁判所の選任する検査役の調査を受ける必要があります。
    (2)この検査役の調査は、平成2年の改正において資本充実の観点から、会社が取得する財産価額の適正性を確保するとの目的で導入されたものです。
    (3)つまり、目的物を過大に評価すると、会社債権者を害してしまうので、法は厳格な規制をしている訳です。
    (4)しかし、事後設立に係る検査役の調査の問題点としては、調査に多額の費用を要し、かつ期間についても長期間にわたり、しかも、期間についてあらかじめ予測する事が困難であるいう問題点があり、会社設立後2年以内には大規模な設備投資や物品購入を原則として禁止する効果を生じさせるため、事業の運営に著しい障害になるという懸念がありました。
    (5)そのため、平成14年の改正により、弁護士、公認会計士、税理士による証明制度が導入されましたが、それによっても、事後設立が抱える問題は解消されませんでした。
  3. 新会社法
    (1).事後設立に際して検査役の調査を受ける必要がなくなります。
    (2).事後設立に際して株主総会の決議が必要となる基準は、営業全部の譲受に際して 株主総会の決議が必要となる基準に統一されました。
    (3).すなわち、純資産額の1/5以上の対価で取得する場合となります。
    (4).新設合併、新設分割または株式移転により新設された会社は、(2)の事後設立の規制を回避する事が出来ます。
  4. 改正の経緯
    (1) 事後設立に関しては、例えば資本金1,000万円の会社が300万円の中古車を買えば 事後設立になりうるが、500万円の新車を買っても事後設立にならないという不均衡 (しかも、会社財産を減少される危険性は後者のほうがより大きい)が、かなり前から指摘されていました。
    (2)また、一般の取引によって会社財産が害される事は、設立の年数とは関係なく常に起きうる問題である事、
    (3) 会社が事業活動に伴い取得する財産の価値の適正性の判断は、取締役等が会社の業務を行う上で最も基本的な判断であって、善管注意義務の範囲内で行われるべき事項であること、
    (4) 調査コストとスケジュール等、事業の運営に障害が発生する事、
    (5) 実務の上で本規制回避のために種々の非合理な努力がなされている事、
    〈例〉
     (ア)事後設立に係る検査役の調査の規制を回避するために、売買契約等を分割して行う、
      (イ)あえて財産状態に問題がある可能性も否定できない会社成立後相当程度期間の経過した 休眠会社を買い取り、これを受け皿会社とすること、等から、新会社法では事後設立の際の 検査役の調査に関する規定は撤廃される事になりました。
    (6).又、資本金に比して少ない対価で営業用の財産を譲り受ける場合にまで株主総会の決議を 必要としたのでは、機動的な設備投資ができないことから、株主総会の決議を必要とする基準も 緩和されました。

二.株主総会の決議が不要になる要件
株主総会の決議が不要になる要件については、合併等における簡易組織再編の要件にあわせて、 取得する財産の対価として交付する財産の帳簿価額の合計額の当該株式会社の純資産額に対する 割合が、5%基準から20%基準まで引き上げました。

三.新設合併等により設立された会社における事後設立規制の排除
新設合併、新設分割、または、株式移転により設立された会社につき、事後設立規制が 課せられないことが明確化されました。

解散・清算について新会社法ではどのような見直しが行われましたか?

一.解散・清算

  1. 会社の法人格の消滅をもたらす原因となる事実を解散といいます。
  2. 解散に続いて、法律関係の後始末をする手続きを清算といいます。
  3. 会社の法人格は、合併の場合を除いては、解散によって直ちに消滅せずに、会社は清算手続きに入り、その完了(結了)によって消滅します。
  4. 清算の目的は会社の全ての権利義務を処理して残余財産を株主に分配する事に有ります。
  5. したがって、会社は事業を継続する事はできず、事業を前提とする諸制度や諸規定は適用されなくなります。
  6. しかし、清算中の会社も法人格としてはそれ以前の会社と全く同じであって、権利能力の範囲が清算の目的の範囲内に限定されるに過ぎません。
  7. 新会社法では、通常清算手続きにおける裁判所の監督を廃止し、その他の規制を緩和する一方で、特別清算については、裁判所の関与を強化し、債権者の多数決できめられる「協定」に基づく弁済を可能とする等の改正を行いました。


二.通常清算において清算手続きに対する裁判所の監督を廃止した理由

  1. 現行法上は、清算は裁判所の監督に属するものとされ、清算人は、解散の事由等を裁判所に届け出ること、財産目録等を裁判所に提出する事を要します。
  2. しかしながら、清算の遂行に著しい支障を来たすべき事情がある場合等において裁判所の厳格な監督の下に行なわれる特別清算と異なり、通常の清算の手続きにおいては、裁判所がこれに積極的に関与する必要性は乏しいといえます。
  3. そこで、新会社法では、通常の清算については、裁判所の監督の制度を廃止しました。


三.特別清算の手続きの基本的な流れ

  1. 特別清算は、株式会社の清算手続きについて、債権者の保護のために、裁判所の関与を強めたものであり、その基本的な流れは、次のようになっています。
    (1)裁判所は、債権者、清算人、監査役、または株主などにより清算株式会社について特別清算開始の申し立てが成されると、特別清算開始の原因があるかどうかを審理します。
    そして、開始の要件を満たしていると、清算株式会社に対して、特別清算開始を命じます。
    (2)特別清算が開始されても、原則として、従前の清算人が清算事務を行います。
    そして、清算株式会社の清算は裁判所の監督に属し、清算株式会社の行為が制限されます。
    また、裁判所は、必要に応じて、清算人の選任及び解任、清算株式会社の財産に対する保全処分、役員等の責任に基づく損害賠償請求の査定の裁判等を行なうことができます。
    (3)清算人は、裁判所の監督の下、清算株式会社の事業を終了させるための事務、 債権の取立てや債務の弁済を行います。
    そのために必要があれば、清算株式会社は、協定案を作成し、債権者集会において、法定多数の債権者の同意があると、協定は可決され、裁判所による協定認可の決定が確定すると、当該協定の内容に従い、債権者の権利が変更されます。
    (4)清算株式会社は、協定が成立した場合にはこれを実行し、清算事務が終了すると、 裁判所は、特別清算終結の決定をし、これにより特別清算の手続きは終了します。

四.破産手続きとの違い

  1. 特別清算の手続きは、破産手続きと同様に、清算を目的とします。しかし
  2. 清算中の株式会社のみが利用する事ができます。
  3. 破産手続きは裁判所が選任した破産管財人が清算事務を遂行するのに対し、特別清算の手続きは、原則として、従前の清算人が清算事務を遂行します。
  4. 破産手続きは債権者に比例して定められる配当額を法律に定められた手続きに従い債権者に配当するのに対し、特別清算の手続きは、債権者の多数決によって定められる「協定」に基づいて弁済が行なわれるなど、柔軟で手続きコストも低廉です。
  5. このような点が破産手続きとは異なっています。

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