買収防衛策指針について

一.経済産業省・法務省の指針
- 経済産業省・法務省は、平成17年5月27日付けで、適法性且つ合理性の高い買収防衛策の指針を公表しました。
- 「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に対する指針」(買収防衛策指針)と呼ばれています。
- 日本では、敵対的買収に対する経験が浅く、どういった買収方法が公正な買収方法で、どういった防衛方法が公正な防衛方法なのかについて共通認識がありません。
- そこで、適法で合理的な買収防衛策のあり方を示して、買収に関する公正なルールの形成を促す目的で公表されました。
- 買収防衛策指針では、以下の3つの原則を示しています。
二.〔原則1〕企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則
「買収防衛策の導入、発動及び廃止は、企業価値、ひいては、株主共同の利益を確保し、又は向上させる目的を持って行うべきである」
- グリーンメーラーや強圧的2段階買収など既存株主の犠牲の下に買収者の利益を実現しようとする買収に対する防衛策や、株主に判断させるための充分な時間・情報・代替案を与えるための防衛策を導入する事は、適法且つ合理的とするものです。
- グリーンメーラー:株式を買い集め高値での買戻しを要求する買収者
- 強圧的2段階買収:株主に売却を事実上強要する恐れのある買収
三.〔原則2〕事前開示・株主意思の原則
「買収防衛策は、その導入に際して、目的、内容等が具体的に開示され、且つ、株主の合理的な意思に依拠すべきである。」
- 事前開示の原則:買収防衛策を導入しようとする会社は自ら積極的に導入の目的、具体的な内容、効果などを具体的に開示する事が必要であり、事前開示は、買収防衛策の導入の適法性を高め、株主や投資家等の理解を得る上で極めて重要であるとするもの。
- 株主意思の原則:株主総会での決議を得て導入する事を原則として、取締役会決議で導入する場合でも、株主に意思で廃止できる措置を採用する事を必要とするもの。
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四.〔原則3〕必要性・相当性確保の原則
「買収防衛策は、株主平等の原則、財産権の保護、経営者の保身のための乱用防止等に配慮し、必要かつ相当な方法によるべきである」
- 株主間で異なる取り扱いをする買収防衛策については、株主防衛策に配慮し導入しなければならない。
- 買収者等の特定の株主に対して財産上の損害を生じさせる恐れがあるようなものについては、正当な手続きを踏む必要がある。
- 過剰でない相当な内容の防衛策を発動するために、外部専門家の分析を得るなどの慎重な検討を求められる。
五.東京高裁決定平成17年3月23日(ニッポン放送事件)
この決定で「会社を食い物にしている場合」として指摘した買収類型
- 真に企業経営に参加する意思がないにも拘らず、ただ株価を吊り上げて高値で株式を会社関係者に引き取らせる目的で株式の買収を行っている場合(いわゆるグリーンメーラーである場合)
- 会社経営を一時的に支配して当該会社の事業経営上必要な知的財産権・ノウハウ・企業秘密情報・主要取引先や顧客等を当該買収者やそのグループ会社当に委譲させるなどの、いわゆる焦土化経営を行う目的で株式の買収を行っている場合
- 会社経営を支配した後に、当該会社の資産を当該買収者やそのグループ会社等の債務の担保や弁済原資として流用する予定で株式の買収を行っている場合
- 会社経営を一時的に支配して当該会社の事業に当面関係していない不動産、有価証券など高額資産等を売却等処分させ、その処分利益をもって、一時的な高配当をさせるかあるいは一時的高配当による株価の急上昇の機会を狙って株価の高価売り抜けをする目的で株式買収を行っている場合。