新会社法では有限会社はどうなりますか?

(1)そのまま有限会社を選択

  • 現在ある有限会社は、特例有限会社として有限会社を名乗ったまま、新会社法における株式会社として存続が可能です。
  • 基本的には、株式会社の規定が適用されることになりますが、当然、新会社法は現行の有限会社法と異なる規定が多い事から、「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(整備法)により、以下のような経過措置が設けられ、現行の有限会社と同様の運用となるよう配慮されています。

 (イ)取締役、監査役の任期規定の不適用
 (ロ)特別決議は議決権の3/4以上の同意
 (ハ)決算公告の不適用

(2)株式会社にシフト 
  • 整備法により、現行の有限会社は定款変更をして株式会社になることが、認められています。
(3)今後の予想
  • 係るコストにもよりますが現行の有限会社の多くは、そのネームヴァリューから株式会社に変更する事が予想されます。
  • なお、整備法には経過措置を設けていない事から、このままずっと有限会社を名乗り続ける事も可能です。
  • 新たに有限会社を設立する事はできません。

新会社法においては最低資本金はどうなりましたか?

1.最低資本金制度とは

  • 旧商法においては、最低資本金として、株式会社を設立する場合は、1,000万円が、有限会社の場合、300万円が必要でした。
  • 株式会社や有限会社の場合、出資者は出資した限度の責任を負うにとどまるので、会社債権者は会社財産のみを引き当てにするしか方法がありません。
    そこで、債権者の保護を目的として会社財産を一定額以上確保するように、最低資本金制度が、設けられていました。
2.最低資本金制度の特例
  • 旧商法においても、特例としていわゆる確認会社として最低資本金の規制を受けずに、資本金1円から株式会社、有限会社を設立する事が出来ました。
  • 確認会社 起業の促進を図るための「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」により、創業者であることについて経済産業大臣の確認を受け、最低資本金未満の資本金によって設立される会社。
  • なお、5年以内に増資、組織変更により最低資本金を充足できない場合には、会社は解散となります。
3.最低資本金規制の撤廃
  • 最低資本金制度は、設立時の財産の出資を要求しているに過ぎず、会社が常に資本金相当額を保持している義務を定めたものではありません。
  • そのため、損失が生じ、会社財産の額が最低資本金の額を下回ることになったとしても、これを補填するために新たな財産を拠出する事は、要求されません。
  • これでは、債権者保護という効果は期待できない事になります。
  • そこで、新会社法では、債権者保護について、剰余金の分配等の規定等の見直しにより手当てし、最低資本金制度を撤廃する事になりました。

商号について新会社法ではどう変わりましたか?

1. 旧商法

 ・ 既に登記されている商号と同一または類似する商号を、同一の営業のために同一市町村内において登記することは出来ません。
 ・ 自己の商号を登記した者は、不正な競争目的で自己と同一または類似する商号を使用する者に対して、使用の差し止めと損害賠償を請求できます。
2.改正法 
 ・いずれの制限も撤廃され、類似商号であっても登記が出来るようになります。
3.改正の目的 
 ・インターネット等が普及している今日、同一市町村内を基準とする意味は薄れています。
 ・ 同一の営業という判断基準のついても、必ずしも明確ではなく、会社設立をする際の類似商号の調査は、非常に面倒なものとなっています。
 ・ 現在は未登記の商号であっても、「商標権」や「不正競争防止法」により登記済みの商号とほぼ同様の保護を受ける事が出来ます。
 ・ そこで、商号の保護は「不正競争防止法」によって行うものとして、不正競争目的にかかる「商法」の商号保護規定は削除される事になりました。
4.不正競争防止法
 ・事業者間の公正な競争を確保するために民事上の救済手段と刑事上の制裁を定めた法律
 ・他社の商号として、広く認識されているものとまぎらわしい商号を用いて商品やサービスを混同させる行為は不正競争にあたるため、その侵害行為の差し止めや損害賠償の請求をする事ができます。
5. 類似商号調査
 ・同一市町村内で類似商号を使用した会社を設立できるとしても、それは、あくまで登記手続き上の問題に過ぎません。
 ・登記上の類似商号制度が廃止されたとしても、商号自体が無くなる訳ではないので、法務局における、類似商号調査は従前どおり、行うべきでしょう。
6.商標権調査
 ・商標権で保護されている商号であるかどうかを確認するための商標権調査も行うべきと思われます。
 ・その他、当該商号を使用している者がいるかどうかも、インターネット、電話帳などの確認も必要です。
 ・インターネット登記情報提供サービスを利用すると登記所に行くことなく商号の調査をする事が出来ます。

新会社法における定款はどう変わりましたか?

一.定款とは

  • 定款とは、会社の組織や活動に関して定めた根本規則のことをいいます。いわば、会社の憲法みたいなものです。
  • 発起人は、株式会社の設立に際して、定款を作成し、認証を受けなければなりません。
  • 定款には必ず定めておかなければならない絶対的記載事項があり、この記載を欠いてしまうと定款としての効力を有しません。
二.定款の認証
  • 発起人による定款作成行為が真正に成立したことを公証人が認証する事を、定款の認証といいます。
  • 株式会社設立の際に作成する定款は、会社の本店所在地を管轄する法務局所属の公証人の認証を受けなければ、その効力は生じません。
  • 会社設立時に発起人が作成し、認証を受けた定款を「原始定款」といいます。
三.新会社法における定款
  • 旧商法においては、
(1)株式会社が設立に関して発行する株式の総数を定款に記載しなければなりません。
(2)当該設立時発行株式数を基準として、株式会社が発行する事の出来る株式の総数を定め、これを定款に記載しなければならないこととされています。
  • しかし、出資される財産の総額に拘わらず、設立に際して発行する株式の数のみが先に定まる現行商法の規定は、設立手続きを硬直化させるおそれがありました。
  • そこで、新会社法ではつぎのような見直しを行っています。
(1)設立に際して発行する株式の総数
  • 資本と株式の数との間には直接の関係はなく、設立に際して発行する株式の総数を定款で定めておく実益がないため、設立時発行株式数については定款に記載しなければならない事項(絶対的記載事項)から除外しました。
(2)設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
  • 資本充実の観点から、設立時の出資については定款で明確に定めておく必要性が高く、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額があらたに絶対的記載事項とされました。
(3)会社が発行する株式の総数
  • 会社が発行する株式の総数は、設立までに定款で定めておく必要はあるものの、原始定款における絶対的記載事項からは除外されました。これは、設立手続きの過程で、株式の引受状況を見極めながら、授権資本を柔軟に変更できるようにしたものと思われます。
(4)公告をする方法
  • 会社が公告をする方法も絶対的記載事項から除かれ、定款で特に記載がなければ官報によるものとされました。
  • そのため、日刊新聞や、電子公告による場合は、旧商法と同様、定款に定めておく必要があります。
  • なお、新会社法における定款は、旧商法と比較して格段にその自由度を拡大しています。

払込保管証明書についてはどう変わりましたか?

一.旧商法
 旧商法では、発起設立(発起人のみが出資者となる設立方法)と募集設立(発起人以外の者も設立に際して出資者となる設立方法)の双方について、払込取扱機関を用いる事を義務付けた上、払込保管証明制度を採用していました。

払込金保管証明書
  • 銀行等払込取扱機関が、設立、増資の際の払込金を保管していることを証明する書面。
  • 払込取扱機関は、会社設立等の効力発生後、会社に対して証明した払込金額に関して即座に無条件で返還しなければならないという重い責任を負っています。
  • これにより、払込の仮装を防止し、資本の充実を図っています。
二.旧商法上の問題点
 (1)銀行等に払込取扱事務の依頼をしても、払込金保管証明書には重い責任が課せられている事から、事実上取扱を拒否された入り、その可否を審査するため相当の時間を要する場合がありました。
 (2)払込金保管証明書の発行には、払込金額に対する一定料率による手数料がかかり、そのコストは、馬鹿に出来ません。
 (3)実務上、保管されている払込金は、設立登記完了後、登記簿謄本を当該金融機関に提出し、会社設立を証明するまで返還がなされていません。そのため、早期に資金を有効に活用できにくくなっていました。
三.新会社法
 (1)発起設立の場合
  • 払込保管証明書ではなく、残高証明書の方法による事も出来るようになりました。
  • これにより、これまで取扱事務に要した時間と費用を時間が削減できるようになり、迅速な設立が可能となります。
 (2)募集設立の場合
  • 株式を引き受けた人を保護する必要性が高いことから、現行法どおり払込の証明は、払込金保管証明書に限定されることになりました。
  • 新会社法では、見せ金による設立が横行するのではないか、との危惧もありますが、最低資本金制度の撤廃により、見せ金を準備する必要性も減少してくるものと思われます。
  • ちなみに、見せ金をつんで資本金を増大させる行為は、公正証書原本不実記載罪〔刑法157条〕を構成する可能性があるので、充分注意が必要です。

「新株発行」に関しては何が変わりましたか?

一.株式

  1. 株式については近時、平成13年、平成14年、平成15年、平成16年に商法改正により、種類株式、自己株式、株券発行等について相次ぐ見直しが行われました。
  2. 新会社法においては、近時の相次ぐ改正を整合的に整理するとともに、以下の事項を含む、広範な規定の見直しを行っています。
    (イ)ある種の株式のみ譲渡制限株式とすることを可能とする。
    (ロ)株主に対して株式を無償で割り当てる事を可能にする。
    (ハ)ある種の株式の全部を株主総会の決議によって株式会社が取得する事を可能とする。
    (ニ)株主の請求により株式会社が株式を取得し、その対価として金銭以外の財産を交付する事を可能とする。
    (ホ)一定の事由の発生により株式会社が株式を取得し、その対価として金銭以外の財産を交付することを可能とする。
二.払込期間
  1. 旧商法においては、新株発行に際し、会社が一定の日を払込期日と定め、その日に発行価額全額の払込が行われ株主となります。
  2. 実務的には、払込期日前に設けられた申し込み期間中に発行価額全額に相当する申し込み証拠金を差し入れ、それを払込期日に払込金に充当する形を取っています。
  3. そうなると、実質、資金の払込を行ったにも拘らず、株主になれない期間が生ずる事になってしまいます。
  4. 新会社法においては、新株発行に際し、払込期日に代えて払込期間を定める事が出来、新株の引受人は、払込期間中の払込を行った日から株主となる事とされました。
  5. ちなみに、新株発行の効力発生時期は、平成16年改正前は払込期日の翌日とされていましたが、平成16年改正で払込期日と改正されました。
    決済リスク削減のためのDVP(払込資金の支払と新株の交付の同時履行)を可能とするためです。
三.発行手続きの合理化
  1. 旧商法においては、第三者に有利な価額で新株発行を行う場合には、株主総会の特別決議が必要です(有利発行承認手続き)。
  2. また、株式譲渡制限会社が第三者割り当てによる新株発行を行う場合、株主総会の特別決議を行わなければなりません(株主の新株引受権の排除手続き)。
  3. 新会社法では、株式譲渡制限会社が第三者割当による新株発行を行う場合、株主総会においてその発行価額の下限について決議する事により、有利発行承認手続きと株主の新株引受権の排除手続きを一本化できるようになりました。
  4. これにより、その後の取締役会決議のみにより機動的な新株発行を行う事が出来るようになります。

現物出資や財産引き受けについては、どのような見直しが行われましたか?

一.

  1. 現物出資とは、出資を金銭以外の財産で行う事、財産引受とは、会社の成立を条件として主に営業用の財産を譲り受ける事をいいます。
  2. 旧商法においては、現物出資および財産引受については
    (イ)裁判所の選任する検査役の調査を受けなければならないこと
    (ロ)出資等をした財産の価額が定款で定めた価格を下回る場合の差額について発起人および取締役が無過失責任を負うこと等の極めて厳格な規制が講じられていました。
  3. 実務においては、こうした厳格な規制を避けるため、現物出資や財産引受はほとんど行われていないといわれています。
二.
  1. しかし、会社設立に当たり、会社成立後の事業遂行を円滑にする等の目的から、金銭の代わりに、事業の実施に必要な財産や特許等の知的所有権を出資して会社を設立したいという要望は強いようです。
  2. 新会社法においては、こうした要望に応えるため、現物出資等の利用を容易にするための見直しを行いました。
三.
  1. 旧商法では、設立時の資本の1/5以下、かつ500万円以下の価格の財産について検査役の調査を免除していました。
    新会社法では、資本に対する割合の要件を廃止し、500万円以下の財産については検査役の調査を不要としました。
  2. 又、取引所の相場のある有価証券だけでなく市場価格のある有価証券についても市場価格を超えない場合は、検査役の調査を不要としました。
  3. 取締役の価格填補責任については、発起設立の場合には民事の基本原則にのっとり、過失責任化を図る事にしています。
  4. 募集設立の場合は発起人以外の引受人の保護のため無過失責任を維持しています。
四.
  1. 資本金が500万円の会社を設立する場合は、現物出資又は財産引受に関する検査役の調査を受ける必要が無くなりますので、用意に現物出資して会社を起こすことが出来ると考えられます。
  2. 実務上、過失のない事を証明するのは非常に困難ですので、他の発起人が現物出資する場合であっても、定款に記載する金額を慎重に定める必要があります。

事後設立について新会社法ではどう変更されましたか?

一.事後設立

  • 事後設立とは、会社の設立後2年以内に、会社の設立前から存在する営業用の財産を一定の割合以上の価額で取得する事をいいます。
二.旧商法
  • 旧商法では株式会社の設立前から存在する財産を、会社設立後2年以内に資本金の1/20以上の対価で取得〈事後設立〉する場合には、株主総会の決議に加えて、検査役の調査を受ける必要がありました。
  • この検査役の調査は、平成2年の改正において資本充実の観点から、会社が取得する財産価額の適正性を確保するとの目的で導入されたものです。
三.新会社法
  1. 事後設立に際して検査役の調査を受ける必要がなくなりました。
  2. 事後設立に際して株主総会の決議が必要となる基準は、営業全部の譲受に際して株主総会の決議が必要となる基準に統一されました。
  3. すなわち、純資産額の1/5以上の対価で取得する場合となります。
  4. 新設合併、新設分割または株式移転により新設された会社は、2の事後設立の規制を回避する事が出来ます。
四.改正の経緯
  1. 一般の取引によって会社財産が害される事は、設立の年数とは関係なく常に起きうる問題である事、
  2. 会社が事業活動に伴い取得する財産の価値の適正性の判断は、取締役等が会社の業務を行ううえで最も基本的な判断であって、善管注意義務の範囲内で行われるべき事項であること、
  3. 調査コストとスケジュール等、事業の運営に障害が発生する事、
  4. 実務の上で本規制回避のために種々の非合理な努力がなされている事、
    〈例〉
    (ア)事後設立に係る検査役の調査の規制を回避するために、売買契約等を分割して行う、
    (イ)あえて財産状態に問題がある可能性も否定できない会社成立後相当程度期間の経過した休眠会社を買い取り、これを受け皿会社とすること、等から、新会社法では事後設立の際の検査役の調査に関する規定は撤廃される事になりました。
  5. 又、資本金に比して少ない対価で営業用の財産を譲り受ける場合にまで株主総会の決議を必要としたのでは、機動的な設備投資ができないことから、株主総会の決議を必要とする基準も緩和されました。
五.対処法
  1. 検査役の調査が不要であっても、安価な設備を不当な高額で購入した等という事になれば、別途、取締役に対する損害賠償責任の問題にまで発展しかねません。
  2. 特に、市場価格が存在しない特殊なものを購入する時は、簡易な鑑定を専門家に依頼する等の方法で、適正価格であることの証明が出来るだけの資料を集めて置くことも重要です。

新株予約権とはなんですか?

一.新株予約権

  1. 新株予約権とは、会社に新株を発行させる、または会社の自己株式を移転させる権利の事を言います。簡単にいうと、コール・オプション(株式を予定の価格で購入できる権利)の事を意味します。
  2. 新株予約権の所有者は、新株予約権を行使して、会社に新株を発行させる、または自己保有株式を移転させる事が出来ます。
  3. 新株予約権は、従来の転換社債権、新株引受権、ストックオプションの総称です。これまでの新株引受権の制限を緩和して出来た新しい用語で平成14年4月1日施行の商法改正で導入されました。
  4. (ア)ストックオプションとは、業績連動型のインセンティブ報酬として、会社の役員や従業員に対して一般的には新株予約権を無償で与え、一定期間内にそれを行使し、株主となることが出来る権利を言います。
    平成9年6月の商法改正で解禁された制度です。
    (イ)権利を持っている取締役や従業員は、自社の株価が上がると、予めきめられた価額で株式を購入できます。それを市場価額で売却する事によって、その差額を利益として売る事が出来ます。
    株価が下がった場合は株式を購入しないので損はありません。
    (ウ)株価が上がると、権利を持っている取締役や従業員の利益も上がるため、業績向上に対する労働意欲を促進させる事が出来ます。
    (エ)この利益を報酬として捉えると、資金が不足しがちなベンチャー企業が優秀な人材を確保するのにも役に立ちます。
二.取得条項付新株予約権
  1. 新会社法では、新株予約権発行内容の一つとして、一定の事由が生じた場合に会社が新株予約権を取得する事が出来るという条項を設定する事ができる事になりました。
  2. これを、取得条項付新株予約権といい、つまり会社が強制的に取得できる新株予約権を発行できる事になります。
  3. また、取得条項付新株予約権を会社が取得する際の対価として、金銭以外に株式、社債、別の新株予約権等その他の財産を交付する事が出来るようになります。
三.新株予約権の消却
  1. 旧商法においては、新株予約権は、発行内容の一つとして消却事由を定めなければ、消却することが出来ませんでした。
  2. 新会社法においては、会社は取得条項付新株予約権を取得し、自己新株予約権とした上で、それを消却することとされました。
  3. なお、会社が自己新株予約権を行使し、株式の交付を受ける事は自己株式の取得となることから、できない事が明確化されました。
四.現物出資による行使
  1. 旧商法においては、新株予約権の行使における払い込みは、金銭に限定されていました。
  2. 新会社法では、新株予約権の行使の対価として、金銭以外の財産を現物出資することが出来るようになりました。
  3. この場合は、設立や新株発行における現物出資と同様、原則として、裁判所が選任する検査役の調査が必要になります。

企業防衛の手段として新株予約権を利用する事が出来ますか?

一.旧商法

  1. 旧商法の下でも敵対的企業防衛の防衛策であるポイズン・ピルとして新株予約権を利用する事はできました。
  2. 具体的には、敵対的企業買収者が一定の議決権を取得する事を行使条件として新株予約権を発行する事により、何かあったときにそれを行使して、買収者の株式持分比率を低下させる事が出来ます。
二.新会社法
  1. 新会社法においては、取得条項付新株予約権を利用する事で精度の高いポイズン・ピルを組成する事が可能となります。
  2. 例えば、敵対的企業買収者が一定の議決権を取得することを取得条項とする新株予約権を発行することにします。
  3. 何かあったときには、会社は、強制的に新株予約権を取得した上で、その取得の対価として自社の株式を発行し、買収者の持分比率を下げる事が出来ます。
三.敵対的企業買収
  1. 敵対的企業買収とは、上場企業の株式を、対象企業経営陣の同意を得ずに、市場における買い集めによって取得する事をいいます。
  2. 対象企業の既存経営陣の意思に拘わらず買収する企業が市場で経営支配権を取るにたる株式を買い集めるとします。
  3. そうすれば、買収企業は事実上、現経営陣を排除することが可能となります。
  4. 1980年代にアメリカで横行した企業の乗っ取りは,この手法を使って行われました。
  5. 現在ではM&Aはより「事業価値の向上」を主たる動機として行われるようになり、かつてのマネーゲームのためのM&Aは余り見られなくなってきています。
  6. しかしながら、不特定多数の株主の利益に着眼する時、期待する利益ももたらさないような企業の株をもち続ける理由も有るとは思えません。
  7. 敵対的企業買収を防御する方法としては市場における株価の向上に加え、会社として適正な株主構成を考え、それを戦略的に構築していく事が必要です。
  8. 平成17年2月以降,大手メディアを巻き込んだ一連の敵対的買収劇により、上場企業にとって敵対的買収リスクに対する関心が高まり、その後迎えた株主総会では、買収防衛策の導入を検討・決議する企業が多くなってきました。
  9. この動きを受けて、経済産業省、及び法務省は、適法性かつ合理性の高い買収防衛策のあり方を示した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」(平成17年5月27日)を策定公表しています。
四.ポイズン・ピル                            
  1. ポイズン・ピルとは、企業が敵対的買収を抑止防衛するための手段の総称を言います。
  2. 直訳すると、毒薬ですが、買収者が企業を飲み込むとじわじわ効いてくる事から名付けられました。
  3. あらかじめ、既存の株主に、新規発行の株式を購入できる権利である新株予約権を割り当てておき敵対的な買収者が現れた場合は、株式への転換を進めることで、敵対的な買収者の議決権比率を下げる方式を言います。
  4. 旧商法では、株主が転換するかどうかを判断するため、必ずしも防衛策になりませんでしたが、新会社法では会社側の判断で転換できるようになります。

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