交通事故の場合も健康保険は使えますか?

 交通事故の場合でも、一般の事故と同じように健康保険による診療は可能です。
病院側から交通事故による負傷の治療について、健康保険の利用をしないように言われたとしても健康保険を利用すべきです。
少しでも自分に過失がある場合は健康保険を使わないと損をします。

損害賠償請求はいつまでできるんですか?

 不法行為による損害賠償請求権の時効は3年です
3年以内であれば加害者に損害賠償を求めることができると、民法では定められています。

事故届けをしていないが、保険金は出るの?

 事故届けをしていないが、保険金は出るの?

 交通事故を起こしたら、被害の大小にかかわらず警察に届け出るというのが大原則で、このことは道路交通法に定められています。
ですので、ちゃんと届出していたら事故証明がとれるはずなんですが、実際には届出をしないケースも多くあります。
ちょっと車体をこすった程度では、修理費だけを払って許してもらうということも多く、このような場合は、いちいち警察に届け出ないのが通常です。
警察に届出をしない場合でも、後々もめたり、保険請求をすることが無ければ問題が起きることも無いわけです。
 しかし、人身事故の場合は、見た目にはケガが無くても意外に重傷だったり(頭を打ってた場合等)、しばらく経ってから後遺症が出てきたりというケースが実際に起こっています。
そうなってから、あわてて「事故証明が取れないが保険請求は出来ないか?」と言った相談がよくあります。
保険請求をするには原則として、事故証明が必要です、これがないと、保険会社も請求は受け付けてくれません。
 しかし、このような場合「事故証明入手不能理由書」というものがあります。 
これは、事故当事者に納得できる理由があり、事故の発生が証明できれば良いことになります。
この用紙に事故の状況と警察へ届出しなかった理由を書いて保険会社に提出します。この書面を元に保険会社が調査して、事故が実際に起きたものと判断すれば保険の対象となります。
 しかし、事故現場で目撃者等がいれば問題ないのですが、ほとんどの場合、目撃者など見つからず加害者と被害者の話を聞いて判断するしかないのが多いものです。
そのような場合には、両者の主張に食い違いがあって保険会社が事故の存在を認めないこともありえます。
やはり、交通事故(特に人身事故の場合)を起こしたら、必ず警察に事故届けをするということが、基本であるということを肝に銘じて下さい。

内縁関係でも賠償金はもらえるの?

交通事故で死亡した者の内縁の妻や夫は、損害賠償の請求をすることができます。

法律上は内縁関係では相続権はありませんが、実質的に夫婦として生活している場合は、判例で損害賠償請求権を認めています。
このように婚姻手続はしていないが実質的な夫婦関係にある、いわゆる事実婚の場合は、婚姻に準ずる関係とみなされ正式な夫婦に近い権利関係が認められています。
 しかし、実質的な夫婦関係の状態であっても同居していない場合は、上記と同様の権利が認められるかどうかは微妙です。経済的な援助として生活費の援助を受けていた場合は、扶養請求権の喪失として逸失利益に相当する金額の賠償を認めた判例がありますが、独立して生計を立てている場合は認められにくいと思われます。
なお、実質的な夫婦関係の状態でない場合(愛人関係)は、損害賠償請求権が認められるのは難しいでしょう。この場合は法定相続人が損害賠償請求権者となりますので、基本的には損害賠償請求権は認められません。
 しかし、死亡した者と戸籍上配偶者であった者との婚姻生活が実質上破綻しており、一定期間愛人と同居し、生活費の援助をしていた場合は扶養請求権が認められることがあり得ます。
また、損害賠償請求権は認められなくても、夫婦関係が破綻していた等の事情を考慮して、内縁の妻に慰謝料を認めた判例もあります。

むち打ちで治療打切りを言われたら?

 交通事故相談の中で最も多いものの一つに「むち打ち損傷」(診断書には頚椎捻挫、頚 部挫傷、頚部外傷などと記載されます)があります。相談の多くは「保険会社からの治療の打切り通告がありどうしたら良いか?」というものです。
 被害者の症状としては、まだ痛み・しびれ等があり治療を続けたいと思っているのに、保険会社の一方的な治療打切りは不当です。被害者の治療を要する期間はあくまでも主治医の判断により決められるべきものです。保険会社が治療打切りを言って来るのは事故後3ヵ月くらいが多く見受けられます。
 このようにむち打ち症に対して一定の期間が経てば保険会社が画一的、かつ一方的に治療の打切りを宣告するのは次のような判例を受けてのものです。
【最高裁判所判例】
 「そもそも外傷性頚部症候群とは、追突等によるむち打ち機転によって頭頚部に損傷を受けた患者が示す症状の総称であり、その症状は、身体的原因によって起こるばかりでなく、外傷を受けたという体験により様々な神経症状を示し患者の性格や家庭的・社会的・経済的条件それに医師の言動によっても影響を受け、ことに交通事故や労働災害事故等に遭遇した場合に、その事故の責任が他人にあり、損害賠償の請求をする権利が有る時には、加害者に対する不満等が原因となって症状をますます複雑にし、治癒を蔓延させる例も多く、衝撃の程度が軽微で損傷が頚部軟部組織にとどまっている場合には、入院安静を要するとしても長期間にわたる必要はなく、その後は多少の自覚症状があっても日常生活に復帰させたうえ適切な治療を施せば、ほとんど1ヶ月以内、長くとも2?3ヶ月以内に通常の生活に戻ることができるのが一般である」(最判 昭和63年4月21日)       
 しかし保険会社のこのような画一的な対応は不当です。あくまでも個々の被害者の症状や検査結果等について医学的に精査した上で治療期間を認定すべきものなのです。
交通事故との因果関係の立証や治療の必要性と治療期間については主治医の協力を得て被害者側で立証する必要があります。その場合には医学的根拠に基づいた立証により保険会社に対し主張し、説得することです。決して保険会社の言いなりになって泣き寝入りすることはありません。堂々と主張立証し治療の継続を勝ち取りましょう。
【後遺障害について】
 むち打ち損傷は、XPやCT、MRI等の画像診断等による他覚所見による異常が認められる事例は少なく、被害者本人の訴えによる自覚症状だけの場合が多いのです。
被害者本人の性格や心因的症状による場合も多いとされ、詐病の疑いもあるため、後遺障害の認定においてはトラブルの多い後遺障害の一つです。
むち打ち損傷の主たる症状は、痛みやしびれ、吐き気や脱力感などさまざまですが、これは後遺障害の等級では12級、若しくは14級に該当する可能性があります(認定基準としては、局部に頑固な神経症状を残すものとして他覚的所見によって証明されるものは12級10号に該当するとされています)。なお、判例では逸失利益算定期間を3年から5年間とするものが多く、慰謝料についても他の後遺障害の例よりも制限される傾向があります。

事故が原因でクビ!補償はもらえる?

 治療期間中に退職した場合については、退職理由を調査し、事故に起因して退職した場合は、退職後の就労不能の実態を勘案し、治療期間の範囲内で休業日数を認定(基本的には退職以降については、実治療日数の2倍を限度として休業日数が認定される)し、退職前の金額に基づいて休業損害が認定されます。
このことについては、裁判所の判例によっても認められております。
 下記判例は23歳の男性の場合です。
「事故による傷害のため事故から約9ヵ月後に退職し、約1年3ヶ月間の無職期間を経て転職した場合(転職後約2ヶ月間で症状固定)の休業損害について、転職前の会社の給与規定に従って順次昇給したものと仮定して基礎給与額を計算し、転職するまではその全額を、転職後は転職先からの支給額との差額をそれぞれ損害と認め、賞与についても同様の方法で損害額を算定」(岡山地裁判決平成10年3月19日 交民31巻2号385頁)
また、交通事故により会社を退職せざるを得なかった場合は、傷害慰謝料(入通院慰謝料)の加算事由になりますので傷害慰謝料の増額請求も合わせて可能となります。
※「休業損害など経済的な面以外でも社会生活上受ける不利益が治療期間の長短や傷害の軽重と必ずしも比例しないことは応々にしてあり、欠勤により勤務先を退職せざるを得なかった場合は、前述の基準(通院慰謝料基準表)で算出された金額に相当額を加算すべきであろう。」(財団法人日弁連交通事故相談センター編「交通事故損害賠償額算定基準」2004年版99頁)

当面の生活費としてのお金が欲しいときは?

 示談がなかなかまとまらず、事故のケガで収入も無いというとき、出費がかさんで生活費にも困ってくる場合があります。
加害者の中には、被害者の足元を見て、被害者がしびれを切らすのを待って賠償金を低く提示してくる場合もあります。基本的に、被害者はこのような示談に応じる必要はありません。納得できない条件で示談書にハンコを押してはいけません。
このように示談成立前に被害者が当面の生活費にも困っているという場合には、被害者請求の制度があります。これは加害者に誠意が無い場合や、支払能力が無い場合、また加害者が賠償責任を認めない等、加害者側から賠償が望めなかった場合には、被害者は加害者の契約している保険会社に直接請求することができるものです。この被害者請求は加害者の同意や通知の必要はありません。
自賠責保険では、「仮渡金請求」、「内払金請求」の請求方法があります。 
保険金の請求は、事故を起こした自動車が契約している保険会社で書類一式をもらい、必要事項を記入し、必要書類を添付して、保険会社に提出・請求します。
仮渡金請求
仮渡金は、賠償金の支払いを受ける前に、治療費や生活費など当面の費用が必要な被害者が一定の条件のもとに請求できます。
 ・死亡の場合:290万円
 ・ケガの場合
  40万円:入院14日以上かつ治療30日以上を要する場合や背骨等の骨折で脊髄を損傷した場合
  20万円:入院14日以上を要する場合や上腕又は前腕の骨折の場合
   5万円:上記以外で治療11日以上を要する場合
内払金請求
内払金は、被害者の治療が長引いて、全部の損害額がなかなか決まらないような場合で、損害額が10万円以上に達したと認められたときは、治療の途中でも120万円まで支払いを請求することができます。

貸した車が事故、貸主の責任は?

 クルマの貸し借りは誰にでもよくあることですが、気軽に貸したクルマで人身事故が起きた場合は面倒なことになります。
この場合、クルマを貸した人は運行供用者として被害者に対し損害賠償責任を負います。運行供用者とは聞きなれない用語ですが、クルマの運行を支配し、運行による利益を得る者ということになります。もう少し分かりやすく言うと、クルマを使用する権限を持ち、クルマを運行することが自分の利益となる者ということになります。運行供用者は、直接自分が起こした事故でなくても賠償責任を負うことになります。
通常赤の他人にクルマを貸す人はいませんので、貸す相手は知人・友人であり、貸すのも一時的なものです。ですので、貸主は知人・友人という信頼関係を通じて運行供用者としての地位を保っていると考えられるのです。
なお、貸主が被害者に賠償金を支払った場合は、借主に対して求償権がありますので(民法715条3項)、支払った賠償金とクルマの修理費を全額請求できます。
※支払った賠償金が保険金から出ている場合は、借主には請求出来ません(損益相殺)。保険金ではカバーできなかった損害額についてのみ求償権があります。

ひき逃げ、無保険車の場合、損害の賠償はどうなる?

 ひき逃げや無保険車両による被害者救済制度として、「政府保障事業」というものがあり ます。これは事故により、自賠責保険または自賠責共済からの保険金の支払を受けら れない被害者を救済するための制度です。
政府保障事業は、政府(国土交通省)が自動車損害賠償保障法(自賠法)に基づき、被害者の救済を図るための制度であり、その内容は自賠責保険の基準とほぼ同様です。
※自賠責保険と違い、被害者に過失があれば必ず減額の体象となります。また健康保険等の社会保険を使用しない場合は、社会保険を使用すれば給付を受けるべき金額が差し引かれます。
 傷害事故の場合、治療関係費、休業損害、慰謝料等が支払われ、限度額は120万円です。
※事故の翌日から2年(後遺障害は症状固定日の翌日から2年)で請求権は時効となります。
 請求窓口は、全国の損害保険会社、農協等で受け付けています。
必要書類
  • 請求書及び支払指図書
  • 委任状
  • 請求者の印鑑証明書
  • 交通事故証明書
  • 事故発生状況報告書
  • 診断書
  • 診療報酬明細書
  • 通院費用明細書
  • 休業損害証明書等
※この制度は物損には適用がありません。
※ひき逃げや無保険車による事故でも、他に共同不法行為者がいてその者の自賠責保険から支払を受けられる場合は政府保障の適用はありません。

業務や通勤途中の事故は労災使える?

 会社等に雇用されている人が、通勤途中や勤務中に交通事故に遭い、ケガをしたり死亡した場合、労災保険(労働者災害補償保険)の適用を受けることができます。
会社が労災保険に未加入であっても、被害者が申し立てれば労働基準法により労災の適用が可能です。
労災保険も健康保険と同様、自分の側にも過失があるような場合は、労災保険を使ってください。自由診療で治療を受けると、あとで高額な治療費を自己負担しなければならないことになってくる場合があります。
交通事故による業務上災害や通勤災害の場合には、被害者は労災保険だけでなく自賠責保険に対しても保険金の支払請求権があります。
どちらに先に請求するかは本人の自由ですが、通常は自賠責保険の支払いを先に行うものとされています。
といいますのは、労災保険には、療養補償、休業補償、傷害補償等の給付があり、自賠責保険と補償内容が重複する部分が多いですが、自賠責保険で補償されている慰謝料の給付はありません。このように自賠責保険は、労災保険の給付より幅が広いため、自賠責保険の支払いを先に受け、支払の限度額(120万円)に達した時点で労災保険の給付に切り替えた方が、有利な場合が多いのです。
先に自賠責保険に請求すれば、慰謝料相当分を受け取れたのに、労災保険の請求を先に行ったために慰謝料相当分を支払ってもらえなかったということがあるのです。
また労災保険では、療養中の逸失利益(休業損害)も60%支給されますし、労災福祉事業団から特別支給金が別途20%支給されます。ですので、給与の80%を支払ってもらえることになります。
ところが、「労災を使うとその支給額に応じて、翌年からの保険料がアップする」と言って、労災を使うことに関してあまりいい顔をしない雇用主も見受けられます。
しかし通勤災害の場合は次の年からの保険料に影響ありませんので是非利用すべきなのです。

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