我が国の農業生産の基盤である農地は、国民に対する食料の安定供給を図る上で重要な役割を担っており、農地法に基づく農地転用の許可制度は、その適切な運用を通じ、良好な営農条件を備えている農地を確保する一方、社会経済上必要な土地需要にも適切に対応する趣旨から設けられたものです。
1.農地を農地でなくすること。すなわち農地に区画形質の変更を加えて住宅、工場、学校、病院等の施設の用地にし、また、道路、山林等の用地にする行為がこれに該当します。
また、農地の形質には何ら変更を加えない場合であっても、例えば、火薬倉庫等の危険物の取扱場所において周辺の農地を保安敷地にする場合、道路沿いの畑をそのまま資材置場の様に供する場合等、人の意思によって農地を耕作目的に供されない状態にするものは、転用のする場合に該当します。
2.農地の転用に該当するか否かの判断につき運用上問題が多いものに農業用施設の建設、養魚池の設置等があります。
農業用施設の敷地をコンクリート等で地固めする場合は明らかに転用に該当しますが、農地にガラスハウス等の温室等建築した場合でもその敷地を直接耕作の目的に供し農作物を栽培する場合、敷地の形質に変更を加えないで、鉢・ビニールポット栽培を行う場合等については、転用に該当しないとなっています。
しかし、こういったどちらに該当するか不明な案件は、農業委員会に相談して対処してください。 勝手な判断は違法転用に該当する場合がありますので十分な注意が必要です。
次に掲げるような特定の主体又は、用途に供される農地転用は例外的に許可は要しないものとしております。
(1)国又は、都道府県の行う転用
(2)市町村等の地方公共団体が道路、河川等土地収用法の対象事業に係る施設に供するためのその区域内で転用
(3)日本道路公団、首都高速道路公団、地方道路公社、水資源開発公団、本州四国連絡橋公団等の施設に供するための転用
(4)土地収用法その他法律による収用し、または使用した農地に係る転用
(5)土地改良法に基づく土地改良事業による転用
(6)土地区画整理法に基づく事業、公園等公共施設のための転用
(7)農業経営基盤強化促進法に基づく農用地集積計画の定めるところによる転用
(8)特定農山村法に基づく所有権移転等促進計画の定めるところによって行われる転用
(9)電気事業者が送電用電気工作物等に供するための転用
(10)地方公共団体、災害対策基本法に基づく指定公共機関もしくは指定地法公共機関が非常災害の応急対策又は、復旧のための施設の敷地に供するための転用等です。
基準のあらましは次のようになっています。
基準は大きく分けて
1農地が優良農地か否かの面から見る「立地の基準」と、
2確実に転用事業に供されるか、周辺の営農条件に悪影響を与えるか等の面から見る「一般基準」の2つになっています。
ア原則として許可しない農地
(1)優良農地?農用地区域内にある農地?集団的に存在する農地その他の良好な営農条件を備えている農地(第1種農地・・・概ね20ヘクタール以上の規模の一団の農地、土地改良事業を実施した農地等)
(2)許可する場合(優良農地でも例外的に許可する場合)(1)の?農用地区域内の農地
?土地収用法第26条の告示のあった事業(道路、学校等)の用等に供する場合
?農振法に基づく農用地利用計画の指定用途(畜舎等農業用施設用地)に供する場合
?仮設工作物の設置その他一時的に利用に供する場合で農振整備計画の達成に支障を及ぼすおそれがない場合等
(1)の?第1種農地
?土地収用法の第三条に該当する場合
?仮設工作物の設置その他一時的に利用に供する場合
?農業用施設その他地域の農業の振興に資する場合
?集落に接続して住宅等を建設する場合
?火薬庫等市街地に設置することが困難又は不適当な施設のように供する場合
?国、県道の沿道に流通業務施設、休憩所、給油所等を設置する場合
?地域の農業の振興に関する地方公共団体の計画二即して行われる場合等
(1)の?第1種農地のうち市街化区域内にある特に良好な営農条件を備えている農地(甲種農地・・・おおむね20ヘクタール以上の規模の一団の農地のうち高性能の農業機械による営農に適するもの、特定土地改良事業等の区域内で工事完了の翌年度から8年を経過しないもの)
?特に良好な営農条件を備えている農地であることから、第1種農地である許可する場合のうち?を除くなど許可し得る場合が第1種農地よりさらに限定される。
?又、第1種農地で許可する場合の?の集落に接続して住宅を建設する場合の施設については、敷地面積がおおむね500平方メートルを超えないものに限られる。
イ 許可する農地
(1)市街地の区域内または、市街地化の傾向が著しい区域内の農地(第3種農地)
(2)(1)の区域に近接する区域その他市街地化が見込まれる区域内の農地又は第1種農地(甲種農地を含む)、第3種農地以外の農地(第2種農地・・・周辺の他の土地では事業の目的を達成することができない場合)
2 一般基準(以下の基準をクリアーすれば許可すると言うことです。)
(1)農地のすべてを確実に事業の用に供すること
?事業者の資力・信用はあるか
?農地を農地以外のものにする行為の妨げとなる権利を有する者の同意をえているか
?他法令の許可の見込み等
(2)周辺の営農条件に悪影響を与えないこと
?土砂の流失又は、崩壊その他の災害を発生させるおそれはなか
?農業用用排水に支障が生じないか
(3)一時転用の場合は、その後の確実に農地に戻すこと
(4)一時転用のため権利を取得する場合は、所有権を取得しないこと
(5)農地を採草放牧地にするため権利を取得しようとする場合は、第3条第2項の許可でき無い場合に該当しないこと
農地転用に関する規制の大部分は、4条及び5条を根拠に行っています。
第4条は一般的には農地の所有者が、農地以外の目的に転用することいわゆる自己転用と言われています。
例としては、農家が自分の住宅、倉庫を建てる等です。
これに対して第5条は、農地について転用目的に、権利の設定又は移転をする場合です。
例えば、他人が売買(所有権の移転)、賃借(賃貸借権の設定)により農地に住宅、工場、店舗を建設する。農家の親子間で親名義の土地を無償(使用貸借権の設定)で借りて、子供が住宅を建設する等です。
農業振興地域とは、自然的経済的社会的諸条件を考慮して一体として農業の振興を図ることが適当な地域として農振法に基づき都道府県知事が指定した地域です。(要するに農業に適した優良農地だから農業を積極的に振興していく土地ですと、知事が指定しているわけです。)
次に都道府県知事により農業振興地域に指定された地域は、市町村が農業振興地域整備計画を定めます。
この整備計画は、農業上の用途区分(農地、採草放牧地、混牧林地及び農業用施設用地)を定められます。
この用途以外に使用をしてならないと定めています。(農振法第17条)
したがって、農用地区域内にある農地を指定された用途以外に転用する場合は、農用地区域からの除外することが必要となりますが、この場合は、農業振興制度上から見て除外が適当かどうかの判断なされると共に、合わせて除外された場合転用許可が可能かどうかについても審査されます。
条件が満たされる場合に限り除外が認められます。
また、この除外は2通りの考え方があります。
1つ目は、1年に2?3回に分けて関係権利者から個別に除外申請を行う場合と、2つ目としては、市町村が管内の都市計画に基づき、数年に1度行政サイドから大きな見直しを図る場合です。
このため、農地転用にあたっては、極力農用地区域避けて選定することが必要です。
しかし、周辺の土地利用の状況からみて農地を選定せざるを得ない場合は事前に市町村に相談の上手続を進めてください。
市街化調整区域は、例外事項(土地収用の事業、農業関係施設、国道・県道接続して又は、高速インターチェンジの周辺300メートルの区域内に建設する流通業務施設、休憩所そのた市街化の要因にならない施設等公共性の高い事業に供する場合等)以外は原則として転用許可しない方針です。
都市計画法による市街化区域は、既存市街地の区域と概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とされており、農林水産省と国土交通省の調整がなされており、所定の届出行えば転用許可は要しないこととなっています。
適法な届出を行わないでした農地の転用は違反行為となり権利の取得、設定の効力は生じません。
工事の中止命令がなされるほか、罰則の適用があります。
次に掲げるような場合です。
(1)届出に係る農地又は採草放牧地(以下農地等と言う)が市街化区域内にない場合
(2)届出者が届出に係る農地等につき何らの権原も有しない場合
(3)届出書の所定の記載がない場合、添付書類の添付がない場合この届出の不受理は、行政不服審査の対象になる処分です。
お電話でお問合せ(ほぼ年中無休 7:00~20:00)
© 2018 行政書士武田兵一事務所